意外と高いので真剣に練習してしまう(ハズ)
はじめに以下は、セミナー受講中にノートに走り書きされた小汚いメモを活字に起こしたものである。メモは、講義を聞きながら自分の解釈を込めて書かれているため、講師の中村健太郎先生が述べられたお考えをミスリーディングしている可能性が高い(鵜呑みにするのは危険)。
また、実習や臨床上の細かなテクニック等については文章で記載しようがないので割愛している。内容にご興味をもたれた先生はセミナーに参加すべきである。
大変にパワフルなセミナーである。
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http://www.kavo.co.jp/wp-content/themes/twentyeleven2/images/pdf/seminar/RCT_Seminar_2014.pdf根治には統一された「この方法なら!」がない。治療の確実性が著しく低いことが最大の問題点。経験を積んでもあまり変わらない。確実性を上げるためにはどうするか?
ニッケルチタンファイルがでて、治療の成功率があがっただろうか?
マイクロスコープで治療の成功率が劇的に上がるだろうか?
ハンドファイルのみの時代からエンジンファイルを使用するようになり、化学的な治療方法から脱却しつつある。クロラムフェニコールを貼薬して治癒を図るのは過去の話。感染源を除去したら、根管内と根尖との交通を完全に遮断すればよい。根管内の感染源の除去には限界があり、妥協せざるを得ないこともあるが、たとえそうであっても、根管充填で根管と根尖との交通を遮断すれば良好な結果が得られるだろう。
根管治療に際しては、感染が根尖まで侵されているかいないかが重要
根尖部の感染に対する対応
・根尖部にまだ感染が及んでいない
抜髄処置をして根尖部感染される前にRCF
・根尖まで感染が及んでいる
根尖部の不純物を完全に除去し、殺菌した後にRCF
根管と根尖との交通を遮断することが全てである。そのためには根管外からのアプローチを必要とする場合がある。
※ここでいうRCFは、側枝を含み完全に充填された死腔のないバーティカルオブチュレーションをいう。ラテラルは側枝に対応できず、死腔が生じやすいのは明らかである。根管と根尖との完全な遮断を考えるなら垂直加圧しかない。(ラテラルでも良好であれば臨床的に問題は出ないが、最後の最後のクオリティの部分でバーティカルに劣る)。知識を整理しよう抜髄は、予防的根管治療である。炎症が根尖周囲組織に波及することを防ぐ処置なのである。なので、根管にアプローチできる段階に入って直ぐに根管にファイルを突っ込むのは、根尖に冠部の感染を送り込む行為に他ならず禁忌である。術後の打診痛や予後不良の隠れた原因となる。そして当然ながら、仮封は極めて重要である。抜髄の失敗は医原性と考えなくてはならない。最初に根管にアプローチする歯科医師の責任は極めて大きい。最終的にはRCFにて根尖との交通を遮断させる。
感染根管治療は、治療的根管治療である。
死菌を無害な状態として保存することを目的とする。感染源除去は100%でなければ、理論上は保存不可である。最終的にはRCFにて根尖との交通を遮断させる。
根治に於いてはRCFが最も大切な処置であるわけだが(昨今は拡大とテクニックが重視されて根充が二の次になっている)、これは過去の大谷エンドから既知の考えである。当時はガッタパーチャのみの垂直加圧充填であった。
抜歯の意味は「保存が不可能」ではなく、「抗原抗体反応を起こさせて根尖病巣を消失させる最適な手段」である。歯が細菌が逃げ込む場所になっているのなら、抜歯をすれば残っている細菌は抗原抗体反応で除去されて治癒する。抗原抗体反応を利用するのが治療であり、それはエンドにも当てはまる。根尖部に細菌が侵入できないように死腔をなくすべく根充をしなくてはならない。これには垂直加圧充填が最適である。根尖に残存する細菌や起炎物質を根尖い押し出して抗原抗体反応で除去され、死腔のない充填で根管と根尖が遮断されるからである。根尖に溢出するシーラーは(刺激性の強い成分が含まれていれば)打診痛の原因になるので、刺激性の低い生体親和性の高いシーラーを併用する、且つ、シーラーに接着性があれば良い。ガッタパーチャも、純度の高いものを用いる。
白血球は血液がないと到達できないが、細菌は血液がないところに簡単に逃げ込める。そこで増殖して、活動範囲が血液の及ぶ範囲に達すると抗原抗体反応が起こるが、肝心の最近の拠点は血液が及ばないところにある。長期病理的に嚢胞を形成することになる。
クラウンダウン形成は、湾曲根管の治療を容易にするものではなく、根管充填を確実するために開発されたテクニックで、特に垂直加圧充填のためにテーパーをつけるものである。垂直加圧により根尖部残渣を根尖外に押し出し、死腔をなくし、根管と根尖との交通を遮断させる。この場合、根尖部は細い方が垂直圧がかかるので望ましい。ニッケルチタンファイルで仕上げるなら#25で可。
根管内と根尖歯周組織を遮断することこそがEndodontic Therapyであり、グローバルスタンダードである。それを達成するための方法は様々(my way)である。目的は同じなので、使う材料が違えどやっていることは同じ。
根管の状態を術前に正確に把握することが不可欠である。偏心投影によるデンタルでは不十分で、いまのところ断層撮影しかない。CTは、座って撮影するタイプが患者の頭部の動揺が抑えられるので良い。
ニッケルチタンファイルを臨床に応用する前にひたすら練習をしなくてはならない。
その際は練習用の、エポキシの湾曲根管模型(エンドプラクティスブロック)を用いる。根管治療はブラインドなのだから、用いる器具が根管内でどのように動作するのかを目視することでまず理解しておかなくてはならない。その上で、抜去歯牙に移るべきであるし、その方が効率が良い。
セミナーに参加してエンドは時間がかかる処置と言われるし、自分の臨床でもそうだが、やはり少しでも処置時間は短くしたいし楽をしたい。今の自分がニッケルチタンを使えるようになれば、かなりの時間短縮が可能になることは間違いなく、ニッケルチタンファイルでの形成を真面目に自分のエンドにも取り入れる時期に来ていると強く感じる。エンドは、時間をかければ成績が良くなる治療ではない。
バーティカルもラテラルも、その治療成績に有意差はないと理解しているが、それは正しいなラテラルが出来ていればの話であろうし、果たして自分自身のラテラルが他人に自慢できるほどのクオリティ持っているだろうか。誰も発言しないが、ラテラルは、クオリティ追求すると相当に難易度の高い方法なのではないか。ラテラルは側枝の充填が期待できないし、根尖部に圧をかけての緊密な封鎖に不安が残る。また、ラテラルはバーティカルに比べると時間がかかり、その間は常に感染のリスクを抱えなくてはならない。根充方法もまた、ラテラルだけでなくバーティカルも取り入れる時期に来ている。
エンドに何を用いるかは、結局は目的を達成できればよい"my way"なわけだが、術者が目的を達成しやすいかしにくいかは、材料・器具により明らかに影響を受ける。「歯科治療は、道具の良し悪しが多分に影響する(道具がいいから、私は上手に治療ができている)」と発言して憚らない先生も多く、良質な器具・材料を探求し揃えることは大変に重要である。世に聞く「弘法は筆を選ばず」は格好いい格言であるが、実際は職人や名人ほど道具選びは厳格で拘りを持っており、弘法は優れた筆を選ばなくてはならない。歯科医師も同じである。道具を如何に使いこなすかを考えることがまずあり、そこから、自分の求める道具を貪欲に探求すべきである。
明確な目標があるのなら、あなたの目の前にはこなすべきタスク(ガイダンス、導き手)が自動的に現れるはずだ。
目標に向かうとは、素直にそれらを達成していくことである。
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