2013年12月24日

健康アイテムを口にする前に

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私の母には少なからず「健康グッズマニア」な気質がある。大学生の頃、帰省するたびに健康サプリやグッズを薦められたものだ。親が子の健康を慮っての行為だろうが、騙されているだけなのではと言い出すこともできず複雑な心境になったものだ。健康をうたう商品はどうも胡散臭いからである。効果には個人差がありますの一言で全てOK。それでも、有る程度の効果が認められると判断された商品は「本物」として市場に残ってくる。実際に、母に薦められたものの中にも、気に入って使い続けているものもある。やめたもの(止めさせた)ものも多いのだが。

問診で患者さんに服用薬剤について尋ねたとき、健康サプリや健康食品(以下、健康アイテムとする)の名を聞くことがある。誰しもが通販番組で目にしたことのあろうアイテムからブルーベリーまで様々。意外に多くの人が健康サプリを摂取しているようだ。「服用すれば健康になる」なんて、そんなに楽なら手を出したくなるのが普通だろう。人間はとかく楽をしたがる生き物だからである。

いつも思うのだが、なぜ健康アイテムの利用を始める前に口の中を綺麗にしないのだろうか。歯周病菌とカンジダ菌まみれの不浄な口のままにして健康アイテムを摂取しても、その効果が期待できるのだろうか。悪玉菌のサーバーがそのままなのに、全身状態の改善が摂取するだけで見込めるとは思えない。これは、エンジンオイルがドロドロで状態不良のエンジンを乗せた車を速く走らせようとしたときに、ハイオクを入れたりターボやスーチャーをつけたりしても仕方がないのと似ている。

余談だが、最近母が手を出している健康アイテムが水素水である。水素が悪玉の活性酸素を除去して健康になるのだとか。うーん疑似科学っぽい。でも、飲むとなんとなく次の日の朝の目覚めが良い…過去の機能水ブームみたく、水素水を歯科治療に応用する動きが出てくるかもしれない。もうあるかもしれんが。

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2013年12月17日

表面麻酔にリドカインテープ

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浸麻にて、注射針の刺入時の痛みだけでも緩和しようと使用されるのが表面麻酔である。母校の歯科麻酔講座では「表麻は効果がねえ」と言っていた気がするが、キチンと使用すれば効果は得られると私は考えている。ただし、刺入時の痛みは消せても、組織への麻酔液注入時の痛みは消せないようだ。表面麻酔をガッツリ効かせれば、その痛みも消せないだろうか?注入速度が速いのか?

世の中には表面麻酔をしないか、あまり効果がない使い方をしておられる先生が多いようだ。時間はかかるし、結局は麻酔液注入時に痛みを訴えられるからであろう。しかし、他者の人体に針を刺す行為を行う以上、限りなく無痛に近い麻酔は追求すべきである。実際に、上手な先生の麻酔は痛くないと昔から耳にしている。追求すれば不可能ではないはずだ。患者にしても痛くない麻酔を望むし、術者にしても痛い思いはさせたくない。痛くない麻酔。それの実現は(使い古されていて嫌いな表現だが)win-winな関係にある。

さて表面麻酔についてだが、液体からゼリー状、そしてテープ状のものまで様々である。多くの歯科医師にとってはゼリー状のものが馴染み深いだろう。私も表面麻酔との出会いはプロネスパスタアロマやハリケインゲルであった。今回の記事ではテープ状の表面麻酔材であるリドカインテープを遡上にあげる。同類の製品にユーパッチやペンレスがある。

使い方は、表麻の基本的なルール通りである。
即ち
・貼る部位の粘膜をキンキンに乾燥させる
・作用時間に最低二分間を費やす
である。
貼る部位は、歯肉境移行部がよいだろう。ここに最初の注入を行い、重力を利用して次の刺入部位まで麻酔の範囲を広げていけばよい。次の刺入部位は、付着歯肉や歯間乳頭部となるだろう。つまり「次の刺入部位」は本命の刺入部位である。最初から本命に注射針を刺すと(どうしても)痛いので、時間を要してでもこの方法をとる方がよいと考えている。あまり痛くない麻酔ができれば、患者さんは治療に協力的になってくれるはずだ。

リドカインテープは、シートから剥がしたあと、半透明のビニールの粘着側を、歯肉境移行部の刺入予定部位に貼る。貼ったあとは乾燥状態を保持したいのでロールワッテを用いてスペースと防湿を確保する。二分経ったら刺入だが、テープの上から針を指すことも可能である。刺入時の粘膜はテンションがかかっている方がよい。刺入したらゆっくりと麻酔液を注入する。カエルの腹様に粘膜が液体で膨隆するが、ある程度の大きさであれば指で押して麻酔液を移動させて麻痺を意図的に広げることも可能である。

リドカインテープは使い始めたばかりだが、貼りづらい点を除けば上々の結果を得ている。より痛みの少ない浸麻のために、あとは電動注射器の導入やカートリッジウォーマーの利用が挙げられる。余裕があれば導入したいところだ。


浸麻に関する過去の記事
右向き三角1痛くない浸麻ができれば
posted by ぎゅんた at 18:59| Comment(0) | 局所麻酔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月14日

“Successful Local Anesthesia for Restorative Dentistry and Endodontics”on iBooks

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今月号のザ・クインテッセンスのP171にて紹介されていた本である。修復治療と根管治療における、「成功する」局所麻酔ついて書かれた本のようだ。興味がわいたので読んでみることにした。epub形式なのでiPadで好きな時に読めるのはいい感じだ。いつか英文をスラスラ読める日がくるのだろうか…

ところで、第六章のEndodontic Anesthesiaに面白いくだりがあった。

Commencing with treatment
The problem with this approach is there is no way to know if the patient is numb until we start to drill on the tooth. A typical scenario during endodontic therapy can become problematic if the patient jumps when the endodontist hits the dentin during access preparation on a mandibular molar. The endodontist may say, “Oh, did you feel that?” and try to continue with treatment. If the patient jumps again when the dentin is touched with the bur, the endodontist may say, “Hold on for a minute or two,” and continue to drill to expose the pulp and then give an intrapulpal injection. This is not the best scenario for the endodontist or patient.

IN CONCLUSION, starting treatment may add apprehension to the dentist and patient because neither one knows if the tooth is anesthetized.


以下、信頼のおけない翻訳

…(この記事の直前のセンテンスまとめ)
・口唇の麻痺は、歯髄が麻酔されていることを意味する所見ではない
・患歯の周囲軟組織が麻酔によって無痛を示した状態であっても、患歯の歯髄が麻酔されているとは言い難い

これらの問題は、患歯に麻酔が奏功しているかどうか、歯科医師が歯を削り始めるまで知る方法がないことにあります。エンド治療における「よくある話」に、下顎大臼歯の髄腔穿孔の術式で象牙質にバーの切削が達した時に患者が飛び上がったら(困る話だ!)、がありますが、こんなとき、歯内療法医は「あ、痛かった?」と言うでしょうし、治療を続けようとします。切削バーが象牙質に触れて患者が再び飛び上がったならば、歯内療法医は「一分、二分辛抱して」と言うでしょう。そしてそのまま穴を開け歯髄を露出させて髄腔内麻酔をします。これは、歯内療法医にとっても患者にとっても素晴らしいシナリオではありません。

まとめると、歯科医師も患者も、歯に麻酔が効いているかどうか分かりません。そのことが原因で、治療を開始するときは歯科医師と患者には不安が加わるのです。…



"the patient jumps"
海外の歯科診療でも日本と同じような光景がみられるようだ。人類皆兄弟である。

海外のエンドトリートメントはすべからく局所麻酔下で行われるときく。そして外人はしばしば「なんで日本の"RootCanal"(根管治療のこと)は痛いの?」という。それは、日本人が痛みに強く我慢する人種であることに加えて「根管治療が痛いのは当たり前」と考えているからと思われる。抜髄で神経を外科的除去しても、次回来院時にファイルを挿入すれば痛かったりする。それは、残髄に起因するだけでなく、象牙細管内の自由神経終末に依るものだったりする。神経を取ったのだから痛くないハズだと考えるが、歯が、そんな単純な道理なものだろうか。根管の中は想像もつかないほど複雑な構造であり、我々歯科医師が触れられる範囲はかなり限定的なのである。なので、手応えの良い抜髄処置ができても、次回来院時にファイルを挿入して痛みがあっても不思議ではない。生体は単純ではない。

海外ではきっと「根管治療はすべからく痛みを伴うものであるから、治療の際には麻酔をかけなさい」と教育がなされているのだろう。日本ではそうではないようだ。少なくとも私は学生時代にそういう教育は受けなかった。加えて、根管治療時の浸潤麻酔には保険評価がない。つまり、タダで浸麻奏功のためのコスト(おそらく50〜100円)と時間を提供しなくてはならない。だれがやるというのか。善意に依存しているだけである。120点以下の診療行為なのだから評価されてしかるべきだと思うのだが(無痛で処置可能なことのある「う蝕処置」には点数がついているくせに…)。だが、仮に実現したところで過去の「ラバーダム10点」よろしく「やってないけど浸麻の点数算定」につき包括化(0点化)される運命となるだろう。善意に依存したシステムは成立しえないのか。
 
posted by ぎゅんた at 22:21| Comment(0) | 書籍など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月07日

mAxアクセサリーポイント(サンデンタル)の使用感

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アクセサリポイントについては過去に記事にした
GCのアクセサリポイント(中)に代わるアクセサリポイントを探していた、という話である。なにしろ使い勝手が良い万能タイプの形状なので、今更ほかのアクセサリポイントを使う気も探す気もないのである。ただし、GCのガッタパーチャポイントはたいへん高価である。一応の廉価版を用意する必要があった。

サイズがほぼ同等のアクセサリーポイントにmAxアクセサリーポイント(中)があったので購入し、数回のラテラル根充を行った。結論を述べると、悪くない使用感に満足している。
GCのそれに比べるとコシが劣る感じだしポイント表層に艶がない点が貧相で残念だが、重要な操作性において「違和感なく使える」のは実にありがたいところだ。
posted by ぎゅんた at 00:00| Comment(0) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする