溶液による根管洗浄の他に、なにか効果のある方法がないものか考えた。
1.イオン導入法
2.歯科用レーザーの応用
3.ヒールオゾン
4.根管内にサホライド塗布
…ぐらいだろうか。
この中の本命は、昔から脈絡と受け継がれているイオン導入法だと思われる。しかし勤務先にイオン導入はない。そして時間がかかる上にラバーダムが必要である。なので、意外に保険診療向きではないかもしれない。排膿が止まらないような根管に辛抱強く適応するとよい結果が得られると聞くが、どうなのだろう。古い手法だが、近代エンドにあって再評価されるべきものだろうと思う。手軽に短時間に適応できないのが欠点か。
歯科用レーザーの根管への応用は、効果が高そうで期待できそうだが、レーザー光を直接当てなくては殺菌効果が得られないことがネックとなる。照射チップも、専用の細く硬いものを根管内に挿入して用いなくてはならない。根尖部の複雑な根管系を、直線的にならざるを得ないレーザー光で殺菌するのは現実的ではないと考える。利用するなら、逆根充時の根管形成時に用いるか、穿孔部の殺菌止血に用いるかが現実的であり、根管の殺菌に積極的に用いるには課題が残る。
ヒールオゾンは、いまはもう話を聞かなくなってしまった。
オゾンジェルを根管内に応用する云々は耳にしたことがあるようなないような、といったところ。興味はあるが触れたことはない。
オゾンは、単価の安いオゾン水を根管洗浄に用いる(とにかく大量の溶液で洗い流す)のが実用的ではないだろうか。
根管内にサホライド塗布は症例報告を聞いたことがない。サホライドは銀イオンの殺菌作用によるう蝕病巣の進行抑制なので、あながち無意味ではなさそうな気はするのだが。
調べたら、サホライドRCというのがあった。しかし症例報告を聞いたことがない。
え、残髄処置は…?
さて、お気づきのことと思われるが、これらは根管内の消毒・殺菌を目的にしているのであって、残髄予防は兼ねていない。ここで残髄予防を兼ねた根管殺菌を期待する器具を紹介することにしよう。
コスモiキュアとコスモデンタルサージ
昔からある器具であるが、あまり有名ではないようだ。
コスモiキュアは、研修医が終わって一年目のときにバイト先で初めて出会った記憶がある。高周波治療器の名目であるが、EMRと超音波スケーラーの機能もついているお得感のあるパッケージングであり、そこの院長は主にEMRと超音波スケーラー、高周波によるHys処置に使用していた。
そんなコスモiキュアであるが、高周波機能だけに独立させたコスモデンタルサージが登場した。
このたび私が購入したのは、このコスモデンタルサージになる。
なぜ購入したのか?
それは、高周波を利用して自分のエンドをより高めていきたいと願ったからである。
以下の項目の実現を期待して購入に踏み切った。
1.ファイルを根管に挿入した状態で通電することで、根管内を消毒・殺菌できる。
2.抜髄する歯髄にファイルを刺した状態で通電すると、根管狭窄部(生理学的根尖孔や側枝)の歯髄が熱で蛋白凝集を起こす。根管狭窄部に熱が集中して、そこで歯髄が切断されると理解すればよい(メーカーは「歯髄焼灼」と呼称)。
これは、現状の不確定な生理学的根尖孔での断髄による残髄のリスクを減らすことができると考えられる。また、熱による殺菌効果も当然、期待できる。
3.根尖よりファイルを突き出した状態で病変に通電することで病変の縮小を図ることができる。
4.プローブチップで通電すればポケット内の殺菌・消毒に用いることができる。
5.歯肉切除や止血といった、電メスと同様の使い方も可能。
6.ジアテルミーが可能。
...
色々とあるが、結局のところは、私のエンド臨床にある「確実な根管洗浄(による消毒)と残髄を起こさない抜髄に対する一抹の不安」に応えて欲しいという、大きな背景が理由にあるのである。
そして嬉しいことに、購入当初はおまけのように考えていた4.5.6.もかなり有益であることが分かりつつある。特に6.ジアテルミーは、まだ勉強と実践を始めたばかりだが、うまく使いこなせれば大きな武器なりそうな手応えを感じている。
ただし、週に一回あるかないかの自宅勤務時にしかしか使えないので、まだ理解しているところは少ない(ジアテルミーを含めたコスモデンタルサージの実際的な応用については、今後、ジャンル別に記事にしていきたいと考えている)。
ひとまず、私は残髄の予防と根管の殺菌を目的としてテルテックコスモデンタルサージを購入した。
この機械と心中するつもりで使って行く所存である。勤務先にはないので、週に一回(実家で)しか使えないのがもどかしい。
ご興味のある先生は…
特徴的な機器であるから、テルテックより説明を受け、デモ機の貸し出しを受け、実際に使ってみることから始めるとよい。抜髄時に通電する歯髄焼灼からから始めよう。
テルテックHP
担当:前川
まとめ
効果的な能力が謳われる器具であるにしろ、コスモデンタルサージは、従来からのエンド治療の上に成り立つ追加的な扱いとなる。即ち、根管内の感染源を徹底除去する原則は変わらないし、コスモデンタルサージは感染源を徹底除去するものでもない。感染源を除去して行った根管を高周波のアプローチでもって消毒するものである。
コスモデンタルサージが私の臨床を底上げしてくれる力となることを願うばかりだ。