まとめ
・キシリトールは継続摂取で虫歯予防に効果がある
・窓口販売で、魅力的な製品を置いてみるのにこれはいかがだろう?
ご存知のとおり、キシリトールは、非う蝕原生の甘味料である。ショ糖とほぼ同じ甘さで、カロリーがある。大量の摂取で下痢を誘発する欠点はあるものの、ユニークな特性を有する。
それは、
1.ミュータンス菌はキシリトールを代謝して乳酸を産生できない
2.キシリトールの継続摂取により、キシリトールを代謝できないミュータンス菌(悪玉菌)が減少し、キシリトールを代謝できるが宿主には無害な菌(善玉菌)が増える
ことであろう。
これは、非う蝕原生の人工甘味料にはない性質である。継続摂取は、最低三ヶ月以上が必要と聞いている。
なお、キシリトールには再石灰化を促進する効果はないと考える。虫歯予防ということで再石灰化能がありそうな印象を受けるが、それは日本にキシリトールが導入されるときに「フィンランドの子供たちは食後にキシリトール入りのガムを噛む」印象が強いためである。すなわち、甘味料にキシリトールがあることで唾液の分泌が促進される刺激となりうることと、ガム咀嚼による刺激唾液の分泌である。唾液、ことに刺激唾液には再石灰化能(ならびに緩衝能)を認めるが、キシリトールにはない。再石灰化は、あくまで唾液によるものである。
ミュータンス菌が口腔内より減少することは、単純に虫歯予防に直結するだけでなく、プラークの減少にもつながる(産生されるグルカンの量も減るから)ことが期待される。プラークが減少すれば、口腔内細菌、ことに偏性嫌気性菌の増殖可能環境の減少につながることも期待できる。口腔内衛生環境が悪い患者は、まず食生活習慣チェックすることが大切である。う蝕にしろ歯周病にしろ、生活習慣病の側面が強いので、なにかしら原因が見つかるものだ。とりあえずショ糖の摂取回数を下げるだけでも大きな効果があるに違いない。キシリトールの摂取は、その上で、より口腔内衛生環境を向上させる修飾因子となる。
我々がキシリトールを摂取しようと思えば、手軽に思いつくのが、市販されているキシリトール含有ガムを摂食することであろう。ただし、キシリトールは100%含有商品の姿はほとん見かけない。代わりにアスパルテームのような人工甘味料が添加されている。キシリトールは人工甘味料ではなく、ほぼ砂糖と同等の甘さを有するので、通常のガムに用いる砂糖の代替に用いるとコストが跳ね上がる。それは商品価格に反映されるわけで、結局はキシリトール含有をうたってはいても、人工甘味料も多く含まれる商品になっている。
キシリトールの継続摂取によるユニークな効果を期待するのなら、やはりキシリトール100%の製品にしたいものである(歯科でプロが扱うものが、市販されているものと同じでは格好がつかない側面もある)。そしてこれは個人的な考えだが、私は人工甘味料の味が嫌いで、安全性に疑問を持っている。なので、キシリトールの摂取を進めるとすれば、自ずと100%キシリトール含有の商品に限られてくる。その上で、安く、興味を引くデザインで、味が良いものが望まれる。歯科医院専用のキシリトール100%ガムもよいが、同じようなものがコンビニやスーパーで買えると思っている患者さんも多く、目新しさがないのは欠点である。そんななか、「歯医者さんがつくったチョコレート」はかなりよくできた製品である。味も普通に美味しいチョコレートで、これがキシリトール100%とは信じられない。歯磨きした後に食べてもokという、常識はずれな使い方をしても大丈夫なのはインパクトがある。
キシリトールに関しての私の見解は、上記の通りであった。
そんな中、つい先日の話であるが、知人がフィンランド旅行土産に、スーパーのお菓子売り場に並んでいたというお菓子をくれた。それが、冒頭の写真にあるムーミンの描かれたとても可愛らしいお菓子である。ご存知の通り、ムーミンはフィンランド生まれで、フィンランドでは国民的キャラクターとして愛されている。
キシリトールコートされたラムネとグミともつかないお菓子だが、程よい上品な甘さ(肝油を舐めたときに感じるような甘さ)で美味しい。一粒を構成する93%がキシリトールのようだ。パッケージは小さいが、粒ぐらい入っているので、一日2粒で一ヶ月の継続的なキシリトール摂取が実現する。シンプルで飽きのこない味で、可愛らしいパッケージであるから、これを窓口にキシリトールによる虫歯予防グッズとして並べれば、患者さんに喜ばれるのではないだろうか。
調べたところ、こちらサイトから通販で入手できるようだ。一箱およそ236円である。
http://www.suomikauppa.fi/product_info.php?cPath=24_256&products_id=5659
通販というと、すっかり「いくら以上で送料無料」に慣れてしまっているが、この直輸入サイトはそうはいかないようだ。
窓口販売で最低300円ぐらいにしたいところだが、それだと売っても利益がありませんね…。
実際に窓口に並べるのなら、少し価格を引き上げるかボランティア価格でいくかが悩ましいところだ。
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