多くの(保険診療主体の)歯科医院にとっての「メンテナンス」とは、診察・診断・P検査・スケーリング・歯清(機械的歯面清掃)を指すのではないかと思われる。3〜6ヶ月スパンが普通だろう。この期間内に口腔内にトラブルが起きても、すぐに対応が出来るので有益である。定期的なメインテナンスが個人の歯の寿命を有意に伸ばすことがエビデンスで示されている。メインテナンスは口腔内の状態を治療のように回復させることはないが、少なくともその時の口腔内の状態を維持することには有益である。従って、メインテナンスに移行する前にどこまで口腔内の状態を引き上げておくかが重要になる。
しかし「このままじゃメインテナンス移行できないよ!」という事体はしばしば起こりうる。痛いところや目立つ虫歯を治したからメインテナンスに移行するというのは、ただ数ヶ月先にまた患者に来院してもらうだけの行為に過ぎない。本来は患者の生活環境や生活習慣、口腔内の衛生環境(プラークコントロール・唾液性状・細菌叢など)を把握した上で、治療の介入の必要のない歯牙・歯周・咬合が成立していなくてなならない。だが、それは現実的には理想にすぎるところがあり、モディファイされた判断に拠ることが多くなる。担当した歯科医師の裁量が強くでるのだ。どうも歪である。保険診療主体で患者対応せざるを得ない本邦の異常な保険事情が原因であるのはいうまでもない。本来はメインテナンスは予防行為にあたるから、「保険で"メインテナンスもどき"は禁止、レセ返戻!」というお上の姿勢は間違いではない。ただし現場を知らない官僚の意見であると感じる。全てがSPTに移行できるわけではないし、国民は毎月、安くもない保険料を国に収め、医療は(歯科医療を含め)すべてホケンで受けられると理解しているからだ。自費でのメインテナンスは色々な意味で大変なのである。
愚痴もとい妄言はさておき、ここで保険診療と自由診療のメインテナンスの差異については述べない。メインテナンスで大切なことは、患者さんが定期的に来院してくれることにある。
このような経験をされた人は多いと思うが…
・歯頚部にプラークの取り残しがあるから、ブラッシング時に注意するよう言ったが、相変わらず取り残しがあるまま
・義歯はブラッシング時に一緒に洗って清潔にするよう指導しているのに汚れたまま
・モノが挟まるからとデンタルフロスや歯間ブラシの励行を指導したが、来院時に食べカスが挟まったまま
など。
「あのとき指導しただろうが…」と少しイラっとくるかれない。そして患者さんはしれっとしていたりする(笑)。
患者さんは、我々の説明を、どれほど噛み砕いて説明しても、我々が期待するほど理解出来ないし覚えていないものである。これは患者さん本人の歯科に対する意欲の欠如ではない。歯科が専門外なのだから当たり前のことなのである。我々が「いつになったら理解するのか、いい加減に理解してくれ」などと思うのは、一方的な押し付けといわざるえまい。
イラつくことはない。メンテナンスこられた患者さんに、大切なポイントを思い出してもらうようなに、再度確認してもらうように、そんな気持ちで接すればよいのである。継続したメンテナンスの回数が増えるに従って、ゆっくりと患者さんの意識も変わっていくだろうから、来院してくれことを感謝して接したいものである。
ところで、こんな小冊子をもらった。
絵が可愛いすぎて見ていると顔がほころぶ。
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