2013年02月25日

Pathways of The Pulp - 10th Edition.pdf



世界のエンドドンティストたちは必ずこの本で勉強すると誉れ高い”Pathways of The Pulp”です。
最新版が第10版ですので、古典的な名著といえそうです。
…のわりに、日本では翻訳版がないようです。「海外のエンドの専門書なんざ訳しても売れない」というところでしょうか。保険のエンドの点数の低さは酷いですものね…ラバーダムの10点も無くなって久しいですし。エンドは真面目に精魂尽き果てる思いで処置をしても裏切られることもありますし。だからといって手を抜けばよいものでもありません。さりとて現実的にはそこまで時間と熱意をかけていられないこのもどかしさ。この辺をあれこれ考えると気が狂いそうになるので、ひとまず本書を手にとり、慣れない英語とうんうん格闘して現実を忘れるぐらいでいいのだと思います。

しかし完全英語か…ゴクリ(センター英語88点的意味で)


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posted by ぎゅんた at 19:58| Comment(0) | 書籍など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月02日

関連痛 referred pain でまいっちんぐ

nice dentist.jpg

左下の奥歯がいたーい!と来院された20代後半の女性。夜も眠れなかったという。熱いものがしみるとすごく痛い…
すわ歯髄炎か?と思ったが、肝心の左下の歯には軽い咬耗があるぐらいで、う窩はありません。Perを疑い、根尖側圧痛を確認したが、圧痛もないし腫脹もない。打診痛はあるようなないような、曖昧な返答。EPTは対照歯変化がない。咬合性外傷?ポケットはないみたいです。エックス線写真にはう蝕病巣も根尖透過像も歯根膜腔拡大も骨硬化像の初見もない様子。患者さんは左下5、6辺りを指差してここだと言います。

さて対合歯に目をやると、左上6に、それはたいそう大きなう窩があるではありませんか。歯科医が100人見れば、100人が「どう見てもこれは抜髄やな」と診断しちゃうような立派なう窩であります。軟象を取ればすぐ露髄しそうな具合。打診痛が認められました。

患者さんは左下が痛いんだと固辞しますが、怪しいのはこっちですと説明し、X線写真を見てらいます。
左下が痛いのはおそらく関連痛と呼ばれる異所性疼痛であり、原因の歯はこの左上の虫歯と思われますと説明します。
でも、そこ(左上6)は痛くない…と納得し切れていない様子でしたが、しかし明らかに怪しいのは左上。よくわからんケド患者さんが痛いというから、と指差した歯の神経を取るわけには行きません。歯科の治療は後戻りが出来ない処置ばかりですので、みたところ正常な左下を触りたくない。痛みの原因として最も疑われるのが左上6である以上、その部の処置はしたいのですが左下は触りません…こうしたことを説明します。
納得してくれたようで、少なくとも左上が神経まで虫歯が達しているほど悪くて怪しいなら、処置をお願いしますということになった。

痛みを訴えている患者は冷静さを欠いていて直情的になっていこうとが多いですから、努めて冷静に対応することになります。

実際のところ、軟象を除去するとすぐに露髄し、抜髄となったのでありました。歯髄炎の程度も酷く出血が目立ちました。

そして次に来院した数日後には、左下の痛み嘘のように引きましたと本人。心なしか性格も丸くなったよう思える。痛みは人をおかしくするものです。
良かったですね、やはり原因は左上の虫歯だったんですね、と私。

でも
その胸のうちは「あー、よかった、やっぱり関連痛だったんや、一安心一安心(ドキドキ…)」

こんなもんです。
不安は顔に出さないようにしましょう(当たり前)
患者さんは専門家の診断を聞いて安心する面もあります。

関連痛に関しては、学生時代の清書を紐解いても、特に載っていません。三叉神経領域痛覚は三叉神経脊髄露核に投射されて云々、神経伝達回路の解剖学的錯誤がどうたらとかあった気がするが、気のせいか…

エンドは診断が大切なのだと改めて思った次第です。

関連痛に関しては、寺内先生の「ビジュアライズドイラストレーションズHow to Endodontics」 に詳しく載っています。エンドが好きな先生には必携の良書だと思います。


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posted by ぎゅんた at 00:26| Comment(0) | 根治(未分類) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする