2013年01月18日

エンドと少し関係ない話だが

理想と現実.jpg
内容:恥ずかしい話 〜 智歯抜歯後の後出血の経験

上顎智歯が急性可能性歯髄炎を起こしている場合、多くは抜歯が適応となる。現代人に於いては、智歯が対合歯と咬合して安定していることが少ないばかりでなく、智歯の根管治療そのものが技術的に困難で予後が悪いからに他ならない。患者さん自身もまた、智歯に痛みが出れば、う蝕〜歯髄炎・智歯周囲炎を問わず抜歯を覚悟して来院する向きもある。

実際に、智歯を抜歯せず、抜髄して保存したケースは少ない。
大きな声で言えないが、急化pulの右下智歯を頑張って残そうとしたが、技術的未熟さがゆえに大きなパーフォレーションを起こし酷い痛みを与えたばかりでなく抜歯になってしまったケースも経験している。黙って墓場まで背負っていかねばならない、私の恥ずべき症例である…。

そんなわけで、患者さんが特別に保存処置を希望されないか(残せる可能性があるなら残したい/将来的な移植歯として残しておきたい 等)、開口量が十二分にあり、立派に植立している智歯でもなければ、根管治療が必要となる智歯は抜歯を選択しているのである。

年明けすぐのことであったが、よい経験となったケースがあったので今回の記事として紹介したい。
う蝕に罹患し抜歯を希望された患者さんの左上智歯を抜歯したのであるが、後出血をきたし翌日に来院されたにである。
この方は中年男性であったが、抗凝固薬を服用したり内科的に出血性素因があるわけではなかった。苦戦することなく抜歯し、止血を確認し帰宅していただいただけ。普段通り、なんら心配することもないケースであった。しかし翌日、血が止まらなかったと来院されたのである。自発痛や発熱はなく、単に出血がジワジワと止まらない状態であった。

口腔内を見ると、抜歯窩周囲がに限らず滲み出たような血にまみれていた。
なによりも、赤黒く柔らかな藻のような新生物(?)が抜歯窩から溢れ出たかのように存在していることに内心ビビった。
学生時代、口腔外科の講義で「不意な出血にも慌てず騒がず、まずは圧迫だ!」と何回も耳にしていたのもあり、まずは圧迫止血を考えた。ロールガーゼを噛ませるのである。8分置く。

流石に止まっただろう、と口腔内を見ると血まみれで、あいもかわらず滲み出たような血にまみれていた。俺は胃が痛くなった。
赤黒い新生物(?)はおそらく血餅のなり損ないであろうことは分かったが、ハテ「どけ 邪魔くせえ クソッタレ」と除去していいものか迷った。こんなことは初めてであり、少なくともパニックに陥って冷静さに欠いた行為をとるわけにはいかない。おくびにも表情にはださず、ガーゼの噛ませる位置が悪かったのかもしれぬと再度ロールガーゼで圧迫止血を試みる。8分置く。

流石に止まっただろう、と口腔内を見ると血まみれで、あいもかわらず滲み出たような血にまみれていた。俺は胃が痛くなった。
あいもかわらず血が、憎々しく思えてきた赤黒いブツからでているではないか。
俺はついカッとなってやった、わけではなく、このブツは未熟に過ぎて止血の役目を果たさないのだろうと考えバキュームで除去した。結構な量がズボズボ吸われて行って気分良く綺麗に出来たが、しかし、抜歯窩からは当然、出血している。しかし余計なものがいなくなった今、抜歯窩は、浸麻のエピネフリンの血管収縮効果がないだけの状況に過ぎぬ、ここでこそロールガーゼ圧迫止血すれば解決である!
と、再度ロールガーゼで圧迫止血を試みる。8分置く。

流石に止まっただろう、と口腔内を見ると血まみれで、あいもかわらず滲み出たような血にまみれていた。俺は胃が痛くなった。
時間は押す、止血は不安。こんなの恥も外見もないと思い、院長に相談することにした。後出血なら、止血じゃまず止まらんから、浸麻して抜歯窩を掻爬して止血剤を挿入して縫合しろとのことであった。

浸麻して掻爬して止血剤を挿入してナートへ…
そういえばずっと前に院長は、出血性素因ある患者の下顎前歯数本を抜歯後、後出血をきたして来院された患者さんにそんな処置をしていた気がする。その時は連続ロック縫合をされていたが、今回は智歯一本分の範囲なので単純縫合2糸でよい。奥なので縫合操作がし辛く苦戦する。縫合の技術不足を恥ずかしいほどに痛感する。

苦戦したものの縫合を終えた俺は、再びロールガーゼを噛ませて圧迫止血を試みた。4度目の正直なんて聞いたことがないと胃が痛くなった。

口腔内を恐る恐るのぞくと、全く血がみられず、実にプレーンな状態であった。
いつも通り止血されて見られる光景であるが、なんと美しい光景だろうかと感動を覚えた。この時の衝撃は今も忘れられないのである。誇るべきことなどなにもしていないくせに、恍惚感すら覚えたのであった。

恥ずかしいことだが、正直に書いておきたいと思い、記事にしてここに残す。
ところであの赤黒いスライムみたいなやつの正式名称はなんだろう。
学生時代に習った気がするが、劣等生の脳はとうに忘却しているのである。


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posted by ぎゅんた at 13:04| Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月11日

英文の説明書と格闘の末…よくわからない文章が得られた…

VORTEX BLUE Rotary Files.jpg
VORTEX BLUE ROTARY FIELS

使用適用
根管内の象牙質の除去と根管形成を目的とする


禁忌
なにもない


注意
ロータリーファイルは非滅菌状態であるから、使用前に必ず滅菌すること


使用するにあたって
全ての新製品で言えることであるが、その製品に熟達するまでは細心の注意を払わなくてはならない。いかなるロータリーファイルであれ手用ファイルであれ、長さの決定は必須である。X線を用いるか根管長測定器を用いるかの二つの方法が相応しいだろう。考えられうる誤用の安全策として、抑えておいてもらいたいいくつかのポイントがある。

1.ロータリーファイルは低速ハンドピース用いる
2.分速500回転で用いること
3.ストレートラインアクセス形成は、エンド治療に入る前に固有のものだが、VORTEX BLUEファイルも例外ではない
4.根尖方向への圧は常に最小限にして用いること。ファイルを根尖方向に押し込まないこと
5.ファイルの溝につく汚れをよく拭き取ること(ファイルが根管より引き抜かれ後はファイルの溝に付着している汚れを取ること
6.施術中は根管内を頻繁に洗浄し、滑りを良くすること
7.より良い機械的拡大のために、VORTEX BLUEでは長さの決定は一回でよく、それもほんの少しの時間に過ぎない
8.根尖部とその周辺、明らかな湾曲には注意を払うこと
9.ロータリーファイルは患者間で使い回しをしないこと(一人の患者に用いたファイルはその患者にのみ使用していくこと)
10.器具を根管用いる時は適切なサイズのファイルを用いること。過度に大きなファイルを選択すると、狭い根管形態の歯冠部の過切削起こす。付け加えて、大きなファイルは破折のリスクが大きくなる


拒絶反応
特にない


ステップ解説
滅菌操作
ファイルは使用前に滅菌されていなくてはならない
・石鹸と温水で器具をよく洗浄する
・蒸留水か脱イオン水に通してよく洗う
・自然乾燥させる
・オートクレーブ用トレーに、未包装状態で並べる
・新鮮な蒸留水か脱イオン水を用いる
・136±2℃のオートクレーブに20分かける
VORTEX BLUEロータリーファイルは一人の患者に同一のファイルを用いること。
破棄するファイルは医療用感染ゴミの容器へ

ストレートラインアクセスの形成
VORTEX BLUEロータリーファイルを用いるに当たって、作業長を決定しグライドパスを形成すること
・全ての根管をProLudレジスタードマーク根管コンディショナーで満たした根管をLexiconレジスタードマークK-file(ステンレススチール)で根尖まで通過させる
・#10K-fileを根尖まで通して根管を確保させ、そして少なくとも#15K-fileを通す

根管形成-クラウンダウン
クラウンダウン拡大と形成について記す
・近心根、大臼歯、頬側根、小臼歯、下顎前歯のような小さな根管では30/.04ロータリーファイルから始める。30/.04を抵抗を感じるところか作業長まで入れる。この時の抵抗感が作業長よりも前であるならば、ワンサイズ下のファイルを同手順で行い作業長まで拡大させる。ファイルを交換する際は#10か#15の手用ファイルでリカピチュレーションし、グライドパスの維持と根尖付近でのNaOCl洗浄が得られるようにすること。
・口蓋根、大臼歯遠心根、大臼歯、上顎大臼歯のような大きな根管では、40/.04ロータリーファイルから始める。40/.04を抵抗を感じるところか作業長まで入れる。この時の抵抗感が作業長よりも前であるならば、ワンサイズ下のファイルを同手順で行い作業長まで拡大させる。ファイル交換の間にはリカピチュレーションし、作業長のグライドパスを維持すること。


※ぎゅんたの英語能力は絶望的です


<感想>
なんというか、市場に出回っている現在の第三世代ニッケルチタンファイルらとそう変わらないような感じですね。ストレートラインアクセス、グライドパスの確保をした上で使用するよう勧告しているあたりも、やはりニッケルチタンは根充のための器作りであって、それをして破折のリスクを下げている感じですし。特別頑丈で、他の類似製品よりも切削効率がよく安全ならば別ですが(後発品なのでおそらくそうでしょうが)。

世間で誉れ高かったり高名な先生が使っている器具があったとしても、まずモノをいうのは、その器具を使わんとする己との相性次第だと考えているので、実物に触れて判断するしかありますまい。しかし輸入するほどの熱意はいまの俺にはないんだな。気になるファイルなんですけどね。製品として評価が高ければ、エンドドンティストの間で話題になるので、商業誌に載ってくると思います。 
 

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posted by ぎゅんた at 21:58| Comment(2) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月08日

歯科用情報教材戦線

エンド情報教材.jpg

こんなお知らせが届いた。
手元に届いた先生も多いのではないか。

中身をみると、いかにもの情報教材である。そして効果がなければ60日間返金保証とある。

こういった商材はどのようなものか?

このお知らせを受け取った先生の殆どが、ほぼ一瞥して「ふーん、ああ、ハイハイ…」とゴミ箱行きにしたことでありましょう。私も同じです。よくある情報教材モノそのものだったからです。相変わらずこの売り方なのだなぁと感服した次第であります。

すなわち、

大体的な謳い文句(なぜ、〜は〜なのか?系)
確信を外した説明文が続き…(大きな改行、しつこい強調文字)
ものによっては購入者の体験談が続き
効果がなければ全額お返しします
いまなら◯◯セットのみご用意出来ます!と購入を急がせる煽る文句

の構成だったのです。思い当たるフシがあるでしょう?

しかし気になるのは60日間返金保証の文字。内容物に目を通すと「いかなる理由であれご返金」とあります。単純に考えて、注文⇒視聴⇒返品というタダで情報を得るパターンが考えられます。小学生でもそう思うでしょう。しかし、世の中をー歩いていく上で「ただほど高いモノはない」は鉄則であり常に(罠でないか)警戒と注意が必要でありますから、ホイホイのっかかるのは不安であります。
なぜこの企業(医療情報研究所)は、このような、一見して大盤振る舞いな商法をとっているのでしょうか?
色々と考察してみました。

1.
情報教材のクオリティに絶対の自信がある(満足度が高いので返品要請がこないと踏んでいる)
2.
60日間保証を掲げることで信頼に足る業者と思わせたい
3.
注文した歯科医がわざわざ返金を希望するような面倒な処置はそうそう取るまいと踏んでいる。諦めのつく金額設定であるのはそのため
4.
返品の理由は問わず…とあるが、「なんら一切合切が、先生のお役に立てなかったとは思えないのですが?」と難癖(?)ともいえる正論を述べて返金に応じない構えでいる
5.
「役に立たなかった」理由を論理的にレポートで提出させる(そんな面倒なことに応じる歯科医師も少ないので、返金を諦めさせる算段)。
6.
「先生はクレーマーとして業界内で扱わせていただく」等、こちらの素性を知っていることを脅迫材料にして返金を諦めさせる
7.
返金に応じることは出来かねる、どうしてもというなら法廷で決着をつけよう(裁判に持ち込み諦めさせる)
8.
商品に傷がついとるやないか!返金には応じまへんでぇ!

ざっと、素人考えでもこのようなパターンが考えられます。
が、常識的には2.と3.が本命でありましょう。
歯科医は新しい物好きで飽きっぽい人種で且つ面倒を避けるという普遍的な特徴をうまく期待しての戦略なのでしょう。舐められたものです

60日間返金保証は、

DVDの内容を60日間実践されて結果が全く出なかった…という場合は、下記手順にて、返品を承ります。
まず、ご購入商品名およびFAX番号(FAXが無い方はメールアドレス)をお電話にてお伝えください。事務手続きを経て、商品返送の確認が取れましたら、送料・返金手数料も含め、お支払い頂いた費用の全額を10営業日以内に返金させて頂く事をお約束します。


と公式サイトにあります。
「え、電話せなあかんのか…(めんどくせ」と思われた先生も多いのではないでしょうか。
結局のところ、内容に不満を覚えても返金手続きが面倒がゆえに諦めちゃう先生が多いのだろうと思います。相手に悪いなと遠慮もするからであります。いいお客さんですね。神様です。神は慈悲深い。だが俺は違う。もし購入して期待に沿わない内容であれば躊躇せず返金手続きを要求するぜ。屁理屈なんだりで返金に応じなければ、やり取りその他一切を躊躇せずこのブログに晒す。いいネタってやつです。ネタにしてはちょっと高くつくが、もしそうなっても、今後の被害者を減らせられる人柱のひとつにはなれましょうから、無為なる行為にはなるまい。

ところで、送られてきたお知らせにあるのは、限定商品のようだが、普通にここから買えたりする。しかしこの商品よりも、ぎゅんたはこっちの商品の方が気になったりする。特に

・打診痛を、その場でなくす方法
・痛みのでない感染根管治療とは?
・痛みのでない抜髄のしかた…

が気になる。


ところでその商品説明に
根管治療のDVD教材はどこにいっても見つかりません。
と下線付き記載がありますが、そりゃ言いすぎです。意味不。
他、サイト上で一部、根管を根幹と記載していたりするのも本気で教材を扱っているのかと不安因子。怪しいB級臭がする…


さてどうしたものか。
お財布を張ったネタ作りに一発やりましょうか。
しかしこのDVDセットを購入するお金があれば、昨今安くなった大型テレビを実家の医院の待合室に設置することができる。決して安くない金額なのである。

迷っているあたり、本気で欲しい訳でないのがバレバレですね。
こうした歯科の情報教材、買った先生はおられるんだろうか…全く話に聞かないあたり、やはりアレなんですかね。アレか…あれれ
 
 
posted by ぎゅんた at 13:01| Comment(2) | 書籍など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月07日

アメリカさんにゃあ、こんなニッケルチタンファイルがあらぁな

VortexBlue_ss.jpg

Vortex Blue Rotary Files である。
日本では発売されていないので、今のところ個人輸入ぐらいしか入手できないようです。

説明書の英文を読む限り、従来のニッケルチタンに比べて格段に破折しにくく、トルクフルなようですが、はたして…
もう少し読み進めれば、このファイル独自の特徴がわかるかもです。
まだ読んでないんです…

今後、日本で発売されるかもしれませんが、既に市場には各社のニッケルチタンファイルがひしめいておりますし、そしてまた、本邦のエンド事情を考えると発売されない可能性のほうが高い気がします。自費のエンド治療でないとコスト的に使えなさそう。

気にはなってはいますが、しかし個人輸入してまで使ってみようという気には、今のところ、なれないかな…ニッケルチタンは根管の形成(器作り)にしか使用しないスタンスですし、松風のMtwoファイルで事足りていますし(しかも最近は手用Hファイルでの拡大形成にこだわっている)。

湾曲根管をニッケルチタンで綺麗に形成して根管充填できるほどの度胸も技量も余裕もありません。
少なくとも私にとってニッケルチタンファイルは、”いざというときに頼りになることは認めるが折れ易すぎる”ファイルの域を出ないものです。使い方を誤解していたり扱う技量に欠けていることは認めますが、まさか常に新品を使い捨てでという米国式エンドの方法をとれというのでしょうか。

ウーン、

無理…
 
posted by ぎゅんた at 23:43| Comment(5) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする