2012年12月27日

待合室にはひとまず本が必要だ

book cabinet.jpg

予約制の医院では、本来患者さんは待たなくてよいはずですが、実際は待たないで済むわけがない。
早めに来院されたり急患対応で時間がずれこんだり。アポイント制をいたいながらも、完全に予定通りにはいかないものであります。
だからといってアポイント通りにいかないことを放置してはなりません。たまの例外として時間がずれ込むぐらいにしないと、予約制の意味が薄れ患者さんは時間を守らなくなります


そんなわけで、待っていただく時のお供の代表が雑誌類。医院によってはテレビもありあすね。当院はありません。待合室でチャンネル争いが勃発することを恐れているのではなく、単純にいままでおいてこなかっただけです。いずれは設置したいかなと考えていますが、それは予定であって未定であり確定ではないのです。

そんな折、
実家の歯科医院の待合室の本棚を変えてみました。
いままでの本棚は、無骨で色気のない三段で、漫画の単行本を置こうものなら奥行きがあり過ぎて使いづらく、また、収納できる本の量も少なかったのです。もう少し火力が欲しいと思ったわけです。

漫画なり雑誌が多ければ良いものではないでしょうが、少しでも気持ちよく本を手にとってくれれば、待たせてしまった時に役にたってもらえればと思い立った次第。

そこでぎゅんたは奮起して高価でイカした(死語)本棚を求め東京インテリア金沢店)へ…

は向かわず、ファニチャーエクスプレスへ足を運びます。いたずらに高価でお洒落な本棚を選ぶつもりはありません。築・うん十年の、時代を思わせる鉄筋歯科医院の待合室に、あだや瀟洒な本棚が置かれても浮いてしまうからであります。今回選んだ本棚も、「古い医院の待合室」にある程度は迎合させたつもりであります。は出過ぎず野暮すぎず。使わなくなっても個人的に使えるような、安価なものを選択しました。

しかし組み立ててみれば、あと一段、棚が欲しかったと知った。もう一段、漫画棚が欲しかったのだ。
無駄に縦に高い棚ができてしまった。大きめの雑誌を並べて使おうか。

本棚自体は安物がゆえか剛性が不足していて少し揺れます。耐震性はなさそう。手抜き工事したビルじゃあるまいししっかりせい。床がボロ歯科医院ゆえに傾いているのか?いずれにせよ不慮の倒壊事故が起きぬよう固定処置をせねばなりますまい。

まあでも、アイデアや思いつきを自分の歯科医院(まだ親父のですが)に反映させていくのは楽しい作業ですね。安くできる範囲で改善改良を積み、その限界を新医院の設計に盛り込んでいくことになると思います。

最近、根治の話がありませんね。や、やる気がなくなったわけじゃないんですぞ。
実家にあるヨシダのジロマチックについて、器具の紹介風の記事を起こす予定です。他、コア除去ついて泣き言、あかない根管にどうアプローチするかぎゅんたの考え、とか草案は在るんですぞ。

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posted by ぎゅんた at 15:33| Comment(0) | 歯科医院について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月20日

開業医よーいドン!

歯の治療プーチン.jpg

ゴタゴタが色々とあって、勤務先に金曜以外に火曜日もお休みをもらい、週に二回実家の歯科医院で診療しております。親父がいないことによる院長代理の状況だと思って下さい。いわゆる若先生モードであります。若くないけど

やることは予想以上にあり、
戸締り
会計管理
スタッフ管理
慣れない器具機材
等、
「ただ診療すればよい」身分ではありません。

アウェーとはいえ実家だから気は楽なんじゃ…と思いきや、粘つくような心労見舞われます。
日に25人前後の患者数といえども、終わると妙に疲労感があるのです。
もともと体力と根性に欠ける子であることを差し引いても、です。急に慣れない場所に置かれると弱い脆弱な男なのであります。

もやしっ子自慢はさておき、実家の手伝いを通じて感じたこと。それは開業医は大変だという思いです。こればっかりはぬるま湯勤務医には理解の及ばないところでした。世の開業医の先生方の殆どが、勤務医を経てご開業されておられるとおもいますが、皆さん、きっと最初は「こんなにやることがあるとは」と驚かれたのではないでしょうか。そして苦慮奮闘された経験がおありなのだと思います。勤務医時代にもっと、開業と医院経営について勉強していればこんなことには…と。

「診療だけしていればよい」という立場は楽ですが、将来的に院長の身分を目指すのであれば「釜中の魚」になりかねない危険性も併せ持つわけです。人間は楽きに流れるものです。それは私とて例外ではありません。というか楽さに猫まっしぐらなのが私です。反省しきり。しかし反省は出来ても次に活かさないのも私。くたばったほうがいいんちゃう?

開業医というと、
研修医になってすぐに読んだ 加藤元彦 著「君たち、なぜ歯科医になったの?」のことを思い出す。軽妙で磊落な語り愚痴を主体とするエッセイのような本なのであるが、その中に「開業医は本当に大変なんだ。大学のヒトタチは開業医をカイギョーイとバカにすっけどよ、お前さんたち、開業医は診療だけしていると思っているのかい?」というような記載があった。そのとき自分は大学に所属していたので、この記載はピンとこなかった訳である。だが、いま数年の時を経て、こういうことかいや!と膝を打つことになるのであった。この本は、なりたて歯科医すなわち「歯に詳しいライセンスを持っただけの素人」にこそ読んでもらいたいと思っている。ある程度臨床に慣れた人が読んでも「赤ひげを理想に掲げたちょっと現実が見えていないかもしれない人」の考えと思ってしまうだろうから。しかし、そんな懸念はどうであれ、本書が凛然とした手引き書であり哲学書であり名著であることは変わらない。興味のある先生は是非ご一読されてみてはいかがでしょうか。

この本は(株)ヒョーロン 様が特別頒布してくれております。
http://www.hyoron.co.jp/in/saikan_/book_4/tokubetu.html
※全部床義歯で有名なのは加藤武彦先生で別人です。


ぎゅんたには新規開業する予定はありません。
実家を継承するかたちです。ちょっと実家の手伝いをするだけでも、やらなくてはならないことが新規開業の場合に比べかなり少ないのだと実感します。不安はあるけれど、やりたいこと、変えていきたいこと、導入していきたいことはたくさんあります。これら実現に向けて頑張ろうと思えば頑張れるであろういまの自分は実に恵まれております。自己啓発っぽくいうと「意識が変わりました」ってところでしょうか。受験生が志望校の見学に行くとやる気が湧く現象に似ている。…かも。

さて今後はどうなることやら。
やれるべきところは確実にやれるように。
そして新たな引き出しを慎重に増やしていくことにいたしましょう。

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posted by ぎゅんた at 21:45| Comment(2) | 歯科医院について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月16日

インプラントの急な痛みの原因は

はみがきー.jpg


半年前にインプラントの上部構造(オールセラミック)を入れたところが急に痛みを訴えた!噛むと痛くて食事ができねぇぜ。
それまで何の気兼ねもなくバコバコ噛めていたのにだ!部位は左下6だ!

痛くて噛めない!
上部構造が動く!
歯が浮いた感じ!(中心咬合位ですでに早期接触状態)

なんだこれは?ロスト(フィクスチャー脱落)の前兆か?インプラント周囲炎か?
いつもの咬合位をとろうとすると痛くて無理だぜ。

乏しい経験と知識から原因を冷静に考えてみましょう。
なお、ぎゅんた自身は実際の患者さんにインプラントを埋入した経験はありません(豚さんの顎骨にはぶち込んでいますけれど)。

1.いままではなんともなく機能を営んでいた
2.やたら歯間に物が挟まるようになっていた気がする
3.上部構造の脱離にしては引っ張っても外れない
4.単純に、インプラント周囲炎を誘発するほどプアなプラークコントロールではない(はず)

インプラントは、基本的に咬合痛がある場合はかなりの異常事態である。
埋入後の初期固定がうまくいかなかった場合も起こる。これは自分自身で経験済みだったりする。
初埋入されてヒーリングアバットメントが入って3ヶ月待つ間、最初は何ともなかったが、次第に、咬合圧をフィクスチャー加えると痛みを感じるようになった。放っておけば治るだろうと思っていたが、一向にかわらない。自発痛はないが打診痛が残った状態だと思ってもらいたい。そうして3ヶ月経ち、いよいよ上部構造へ…となったが、ここでフィクスチャーが"回転"したのである。これは初期固定が得られていればあり得ない現象であり、フィクスチャーがただ顎骨のなかに居るだけの状態である。もちろん、咬合痛あるし、フィクスチャーを回転させたときも痛い。浸麻がないとキツイ痛み。
これは初期固定が得られなかっただけなので、時間をおいても無駄である。除去して口径をワンサイズアップして埋入し直しがセオリー。インテグレーションがないので、フィクスチャーを回転させれば除去できるのである。除去後インプラント窩をどうしたかは細かくおぼえていないが、半年ほど待ったのちに、再度埋入することにしたのであった。

次に埋入したインプラントは初期固定がばっちぐぅ(死語)だったので、ジルコニアのカスタムアバットメントをいれてプロビを経てオールセラミック冠が入っていたのだった。噛んでも痛くない。若干、歯間に物が挟まりやすいことを除けば自然に噛める。こいつぁいい。そして半年。記事冒頭の痛みの発生となるのであった。

初回のインプラントがロストしているので、痛みが出た=やり直し と予想して顔面蒼白になった。俺の顎骨はインプラントも拒絶する協調性のない我儘なやつなのかと。
しかし痛この痛みはなにやらP急発の感じがする。歯茎も若干腫れぼったいし。恐怖のインプラント周囲炎なのだろうか。しかし上部構造がプラプラ動いたり沈んだりするのは何故?

俺は院長に泣きつく前に考察することにした。

1.いままで痛みもなく噛めていたので、急にインテグレーションがなくなったとは考えにくい
2.上部構造が揺れるのはわかるが、引っ張っても痛みはない。外れてこない
3.浮いている感じがあり、中心咬合時に早期接触起こす。歯軸方向に押しても本来の位置に復位しない
4.舌側側に炎症は波及していない

上部構造の単なるダツリや、インテグレーションのロストによるフィクスチャーの動揺とは考えにくい点がある。そう思いたいだけのポジション・トークすぎないかもしれないが…
ひょっとしたら、フィクスチャーとアバットメントを繋ぐネジが緩んでしまっているのではないか?
それだと、単純に冠のダツリでなさそうなところも、派手な揺れ(引っ張っても取れてこない)も納得しやすいのである。派手に揺れて出来た歯肉の隙間にプラークが溜まればP急発だって起きらかな。
しかし、こんなことが半年で起こるのだろうか?

まあ、埋入してくれた本人に診てもらうことにしよう。


・・
・・・

結論、珍しく予想が当たりました。
フィクスチャーが緩んでしまっての動揺とP急発でした。歯が浮いているように感じたのも緩んでしまっていたからで、実際に浮いていたわけです。
上部構造は外せないので、咬合面にホールを開け、アバットメントのネジ穴を露出させます。そしてアバットメントのネジを回して除去。フィクスチャーにはヒーリングアバットメントをつけます。これでひとまう一件落着。
これら一連の処置は無麻酔下でやりました。腫れているところを触るので痛かったです。特にヒーリングアバットを入れるところは、急発で腫脹している歯茎を力ずくで押しのけるわけで、メチャクチャキツイ痛み。半泣き。勿論、本来は麻酔下での施術ですが、身内には根性麻酔(我慢して耐える行為)となるわけです。痛いけれどもこはグッと我慢の子。しかしお陰で悪夢の咬合痛からは解放されました。これがどれほどに嬉しいことか。
歯肉が落ち着いたら、アバットメントを入れ直して仮歯からやり直しの予定です。


まとめ
どんな激しい痛みでも、パッと消すことのできる歯科医にわたしはなりたい
"Dentistry is a work of love." 内村鑑三
posted by ぎゅんた at 00:15| Comment(1) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月06日

あの頃のように

明日から本気出す.jpg


まとめ:格言「初心、忘れるべからず」は偉大な言葉だ


細々と通っていた北陸SJCDベーシックセミナー(全6回)。
最終回は受講生と講師陣のケースプレゼンテーション発表でした。この恐ろしく胃が痛くなるイベントが終わりようやく一息ついたところです。最近更新がありませんでしたものね。ずっとサボっていたケープレが気が気でなかったんです。

ここで発表したパワーポイントをうpしたいところですが、流石に恥ずかしいのでやめておきます。広大なネットスペースと言えど個人的なデータで汚すわけにはいきますまい。しかし偉そうに自分の考えをうpすることはできる。そこで今回は、セミナーという機会を通して得られた個人的な所見を素直に述べておくことにします。無添加無調整です。


SJCDは診断用ワックスアップとプロビジョナルに重きを置き

発表における重要な肝。
それは、
診査・診断・治療計画
であります。

当たり前じゃねえか!
と鼻息を荒げることなかれ。本当に大切なところなんですよ。
そして本来は、自分の受け持つ症例すべてはケースプレゼンテーションが出来るものでなくてはならないのです。

あ、当たり前じゃねえか…
と、少し語気が落ちたのではないでしょうか。
それは、ご自身の診療内容が発表に足るものかどうか自信がないところもあるでしょうし、臨床上問題がないので省略しているステップがあることを自覚しているからです。
こうした姿勢を怠慢だやる気がないプロ意識の欠如だと譴責することは簡単ですが、歯科医師すべてが、各々の臨床ケースを常に高度な姿勢で当たっているわけではありません。これは手抜きではなく、通常は省略するような過程は省略した、という意味です。勿論、省略せずに行っても良いのですが、その結果が「異常なし」となるのが予め分かるのであれば、お互いに時間と労力の消費の面が強くなる。いきおい、省けるところは省くことになる。しかし問題点が複雑な様相を呈していることが分かれば慎重な姿勢であたらなくてはならない。大切なのは、省けないところは絶対に省かないことです。当たり前のことを真顔で述べている感が凄いですが、往々にして当たり前のことは当たり前に当たり前でなくなっているものです。時折はこうしてチェックしなくてはなりません。

さて
ケースプレゼンテーションは、診査と診断と治療計画があればできるものだ述べました。基本情報を収集して、問題点を抽出して、術者はどう患者をゴールに導くか?その過程は決して単純でも簡単な話でもありません。様々な道筋があるものです。
ケースプレゼンテーションというと、派手な外科処置や審美的な補綴処置を思い浮かべると思います。実際に、商業誌をみれば載っていそうなものです。すごいです。目を引かれます。
しかし人の目を引けるケースは上級者向けです。
ビギナーはこうはいかない。
「こういうケースだったのでこうやった。凄いでしょうエヘン」というのは、プレゼンを発表する身としてはやりやすいのですが、たいてい、基本である<診査・診断・治療計画>がボロボロで「やりたいからやっただけちゃう?」と言われて〆られます。少なくとも「この計画に基づいて施術して、結果こうだった、そして私はこう考察する」と述べなくてはならないでしょう。

ところで最近思うに
商業誌を中心に世間のケースプレゼンテーションというと、とにかく処置と結果ありきで、基本である「診査・診断・治療計画」が前置き扱いのように等閑に付されている傾向にある気がしてならなりません。それらの殆どは結局は商業主義からくるものですから、要は「診査・診断・治療計画は地味でウケない」ということです。基本、基礎、ベーシック…こいつらは地味だ、退屈なんだ!
そもそもおまえ生理学や生化学の講義のとき寝てるか別のことしてただろうが!ハイソウデス。しかし基礎がいかに大切であるかは当時から知っていました。退屈さには勝てなかったんです…内職したり本を読んでいました。お父さんお母さんごめんなさい(学費的な意味で)。

そしていま、臨床の基本というものを、今回のセミナーを通じ再考する機会となった。
本当に大切なことを見失って臨床に当たっていてはいけない。ベースアップもスキルアップも、すべて基本が確立していてこそ成るのだ。基本ほど難しいところはなく、臨床経験を積むに従っておざなりにされはじめるところもないのだ。

むかし、俺はどんな歯科医師になりたいと思っていたのだろうか?あのとき、国家試験合格発表日に訪れた合同庁舎。自分の受験番号を目にした瞬間、掲示板の前でヘナヘナとくずおれ嬉し涙を流した俺はどんな未来を思い描いていたのだろうか?

初心は変わらずいまも胸の中にある。しかし鈍色に錆びてしまっている。理想に燃え輝いていたところに、現実という塩っぱい冷や水を浴びせかけられたのもあるし、悪い意味で仕事に慣れてしまったのもある。情熱に欠けていたのだと言われればそうかもしれない。だが、火はまた灯る。再び燃やすときがきたのだ。
 

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posted by ぎゅんた at 20:04| Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする