2012年10月30日

スーパーファイルとツイストコントラ(ツイスト角は60度)を使用してみての雑感

根管にみえなくも.jpg


総括:現時点で、積極的に導入する器具には思い至らず

スーパーファイルを使ってみてのポイント
1.自然に根尖までスーパーファイルは進むが、そのままネゴシエーションとなるとは限らない
2.#15を用いた根尖部の拡大は楽。コードレスなのでなおさら
3.「あかない根管」を開ける器具ではない
4.弾力あるステンレス-スチール製だが、無理やり操作すればファイルは折れる


当初、この器具は#15のスーパーファイルがそのまま根管形態に沿って根管口から根尖を通すものだと思っていた。手用ファイルで緊張感まみれながらネゴシエーションするストレスから開放されるのではないかと思っていたのである。

エンドの確かな原則で述べているように、初めて根管に挿入するファイルは、いかなことがあっても根尖まで通したい(ネゴシエーション)と考えている。そのときの手段のファーストチョイスが#10の手用Kファイルであり、一度挿入したら押し引きの動作で根尖まで通すことを目指すのである。
だが、臨床で触れる根管の中にはこの動作で根尖まで通らない根管もある。大抵は生理学的根尖孔の一歩手前でファイルが引っかかっているので、ファイルにプレカーブを付与して慎重に探ると通ることになる。しかし、こうした事態のときの私の心中の焦りとプレッシャーはかなりのストレスである。抜髄根管であれば、ネゴシエーションが達成できなくとも、新たな感染を歯冠側より起こさなけば痛みを起こすこともないのである(歯髄は苛めなければ痛みを訴えない)が、重度の感染がある場合はネゴシエーションが必須だろうと考える。

手用Kファイルを用いたネゴシエーションを、ほぼどのような根管でも達成出来るのであればよいが、まだまだ未熟さがゆえに不確実性がつきまとう。ならば、機械の手を借りて、それがファイルの本来の働きにより導かれるようにファイルが根尖に向かうのであれば、また、用いるファイルが無理な回転を与えなければまず折れないステンレススチールファイルであればと考えた。そこで存在を知ったのがツイストコントラとスーパーファイルだったわけである。製品情報を調べ、ツイスト角が60度のものを用意したのは過去の記事のとおり。本当は30度のものがベストとのことだったが、現在は手に入らないので仕方が無い。


抜去歯牙で練習
抜髄の機会の多い第一大臼歯を練習用の抜去歯牙として得るのはなかなか難しい。多いのは智歯である。しかし智歯は根尖が常識はずれの湾曲を呈していたり癒合していたりして、ポピュラーな抜髄ケースとして練習に望みにくいのが欠点である。根管の無秩序さが酷いのである。重度歯周炎で抜去された歯は、大抵は高齢者であり、根管が狭窄しているが、これは練習にもってこいである。
いずれにせよ、上下7-7の無傷に近い抜去歯牙は貴重なので、あだおろそかに扱ってはならない。練習といえどやり直しのきかない処置をするつもりで緊張感をってあたらるべきである。歯科治療のほとんどもまた、可逆性に欠けるものであるが。

う蝕の除去と髄腔穿孔、天蓋除去をして根管口を確認。
スーパーファイルを挿入する前に、根管口明示は徹底的に行う。
ゲイツの#2.3.4を用いる。ダイヤモンドバーなどは用いない。
エンド三角の除去やストレートラインアクセス形成を目指す。

明示の後、スーパーファイル#15を1000-2000rpmで稼働させながら根管へ挿入する。1500rpmで練習。根管へスーパーファイルが自然に挿入されて行くところまで軽いタッチで操作。力で押し込こむものではない。ファイルは途中で根尖側に進まなくなるので、そうしたら根管の外側に向けて(根管のストレート化狙うため)1引き上げる。次に挿入すると、この引き上げた時点よりもより根尖側までファイルが入る。ファイルがコツンと止まるところまで繰り返す…その地点が根尖端狭窄部である(としている)。
確かにスーパーファイルは、この動きで根尖側に進んで行くのだが、そのままファイルが最狭窄部を穿通してネゴシエーションされるわけではない。極めて単純な前歯単根管であればスーパーファイルがコツンという抵抗もなく出てくることもあるが…器具から伝わる感覚だけで判断するのは少し不安を覚える。

コツンとしたところを素直に根尖狭窄部ないしは生理学的根尖孔と認めればよい。そしてそこまでの通路が確保され、有機物が徹底除去されれば、後感染がない限り問題も生じまい。

だが、#10Kファイルをまず穿通させ、上下1mm運動で通路を確保することをルーチンにしている私にはどうも心理的に許容し難い。

ならば、その後で#10Kファイルを通せばいいではないかと思うだろうが、ステップが出来たのか、根管が穿通しなくなっているのである。これはどうしたことか…使い方を間違っているのだろうか?
逆に#10Kを穿通させてからスーパーファイルを挿入させると、奇妙なことに通らないことがある。やはり、使い方を間違っているのだろうか…

手用ファイルでネゴシエーションした後に、根尖部をスーパーファイルで拡大したいのだが、その後ファイルが通らなくなりそうで心配になる。破折の不安が小さく、疲労も少ないが、手でやって出来ていることを機械でやるというのはどうなのかとも思う。


最近の自分のスタンダードな方法、

手用ファイルで根尖にレッジやステップを作らぬよう「押し引き操作」を中心にファイルを操作して根管の通路を確保しつつ#15Kで拡大
下矢印1
#15Hファイルでファイリング拡大
下矢印1
ゲイツバーで根管口付近を再度拡大明示
下矢印1
手用ファイル#20、#25でアピカルまで(アピカルシートを形成する意識はない)
下矢印1
ニッケルチタンファイル(松風Mtwoファイル)を、#15-#20-#25の順で作業長まで、拡大ではなく、形成する感じ(実際はテーパー分が拡大されている)

こうすると、06°テーパードGPで根充するのならそのまま#25以上のサイズに決定出来るし、通常の側方加圧充填でも、アピカル部分を形成すれば、テーパーがついている分、楽に側方加圧充填に移行できる。06°テーパーでの企画GP根充は楽であるので、基本この方法をとるぐらいでよいのである。

ただ、根尖部に湾曲があるとMtwoファイル(限らずニッケルチタンファイルは)は追従して形成する時の破折のリスクが高くなるので、手用ファイルで仕上げる方法をとっている。

湾曲根管でのファイル破折を避けるため、新品のニッケルチタンファイルを使うというなら大丈夫かと思うが、個人的にはそこまでニッケルチタンファイルを信用していない。常に新品使用が理想だがコストもかかるので保険診療には向かない。
ニッケルチタンファイルは、あくまでも根管充填前の器作りであると考えるスタンスは変わらないのである。


余談
SEC1-0を代表する、上下0.5mm運動のコントラでも、稼働させながらファイルを根管に挿入すると同じようにファイルが根尖に向かう。引き上げて再度挿入すると根尖に向かうのも同じ。ただこちらはマイクロモーターにつけるので重いしコードレスではない。注水できるのはありがたいのだが。
 

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posted by ぎゅんた at 22:26| Comment(0) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月19日

ハイボンド-テンポラリーセメントソフトについて

Temp_cements_soft.jpg

質問というか疑問が浮かんだ。
・HY材って、阪大-山賀先生の略なのか?
・過去に、テンポラリセメントソフトをIPCに応用したところ良好な成績を得たとする論文があったが、それはHY材の何に拠るものなのか?
・軟化象牙質上に設置したテンポラリセメントソフトが、有髄歯で第三象牙質を誘導するのか?


松風(株)のサポートに問い合わせたところ、昔お世話になった方から電話があり回答が得られた。サポセンから技術部に転送されたメールから、私のことを思い出してくれたらしい。
こういう、人とのつながりを感じさせるイベントは嬉しいものである。


電話での回答を以下に記す。京都訛りである(松風は古都・京都が誇る企業)

HY材のHYは、元々はサホライドの開発者である山賀先生が、「(サホライドは)どうしても銀の沈着の黒いのがお歯黒のようだから、お歯白を作りたい」という事で、タンニン-フッ化物合剤(HY材)を開発したのだそうである。そして元々は、まず知覚過敏症(Hys)への適応を考えていたそうだ。HY材のHYはここに由来するのである。

過去の研究から、硬化後の阻止円はテンポラリセメントソフトの硬化後のディスクで認められる。テンポラリセメントハード、IPテンプセメントの硬化後のディスクでは明瞭な阻止円を形成しない。
この阻止円が、テンポラリセメントソフトのタンニンに拠るものではないかとは思われるが、厳密な意味では”殺菌力を有す”とはいえないと思う。タンニンは有機質を凝固させる作用があるから、そこからきているのでは。とりあえず現時点で、詳細な理由を把握しているわけではない、とのことであった。


おそらく
自然界にありふれた物質であるタンニンが有する、タンパク質を収斂させる作用や防腐性(革靴は腐らない)が関連しているのではなかろうか。タンニンが象牙質という有機質リッチな歯質に作用すれば、軟化象牙質程度なら固定してしまうのかもしれない。そして、歯髄側からの象牙細管内液の影響を受けて軟化象牙質が硬化してくるのではないか。浸透性や殺菌性は期待しない方が良さそうである。そして、使うのならテンポラリセメントソフトということになる。硬化後のセメントの強度に不安があれば、ハードの粉をブレンドすれば良いかもしれない(試したことはない)。


いずれにせよ、HY材は興味深い材料である。
3Mix-MPは保険では使用できないが、テンポラリセメントソフトは保険で使用できるし、あまり有名ではないにせよ、覆髄材料として使用出来るのは多くの臨床家にとって有益ではなかろうか。 これ以上の再石灰化を期待するならドックスベストセメントになろうが、保険では使用できない。


P.S.
松風株式会社のN様ありがとうございました。

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posted by ぎゅんた at 20:19| Comment(5) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月15日

「やってみなはれ」的思想

勤務先の院長がエンドのセミナー(二日に渡ってみっちり座学という恐ろしいセミナー)から帰ってきた。

当院ではいままで次亜塩素酸やラバーダムは使用していなかったのだが(根管洗浄にはオキシドール、防湿は、zooはあるもののほぼ簡易防湿)、今度から使おうぜ!ということになった。セミナーを通じて、自院で出来うることから逐次始めていくつもりだそうで、ファイルや器具も新しいものを導入して行くつもりらしい。

やれることがあるなら、まずやってみる。素晴らしいことである。

保険診療でエンドをやっていると、コストという絶対の壁が立ちはだかり、治療上で大切なことはどんどん省かれてしまいそれが結局は「再発」につながったり治せない根治になっているのは否定できない。また、新しい治療方法の導入もないのである。保守的といえばそうなのだが、しかしいつまでも古いままではいけないのだ。

「コストは確かにかかるけれども、それは二の次。まずはやってみよう」とする院長の考えは立派であり、勤務医の立場としては本当にありがたいことなのである。
セミナーに行って最も大切なことは、そこで得た知見をその日からすぐ実行することなのである。セミナーに参加して聞いて感心して終わるぐらいなら、せっかくの休日、趣味に没頭してリフレッシュする方がはるかに有意義である。


ひとまずの変更点は

・ラバーダムを始めてみる
・根管の貼薬には、水酸化カルシウムを混和してレンツロまたはニッケルチタンファイルをリバースで用いる(カルシペックスは使わない)
・いままでは根管の洗浄にオキシドールだけであったが、0.5%次亜塩素酸に切り替える
・穿通用ファイル(Cプラスファイル)を用意
・#06Kファイルを用意

というあたり。
結構、変わってくるのではなかろうか。
あまり使用されることなく誇りを被りがちであったバリオス350も、エンド用Vチップシリーズを購入するらしい。こんなに機材に恵まれていいのだろうか。私は果報者である。


抜去歯牙での要練習項目が増えすぎて、当分暇なしです。
posted by ぎゅんた at 22:17| Comment(0) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月14日

注文のツイストコントラセットが届いたぞ!恐怖の請求書と共に…

届いたよやったねタエちゃん!.jpg


このたび入手したツイストコントラとスーパーファイルです。

ファイルは、マニーのスーパーファイル#15−40(18mm&25mm)を使用します。
一般の等速コントラにも装着出来ますが、回転運動させて使うファイルせはないので、やはりツイスト運動の出来るコントラヘッドが必要となります。

メーカーに問い合わせたところ、初谷先生がご考案されて使用され始めていたころのコントラヘッドは、いまはもう扱っていないそうです。ただ、ナカニシ(NSK)はいまでも、アングルが60度のものを用意してくれており、これを用いればよいとのことでした。そして、コードレスでフレキシブルに扱うためにPMTC用のタスカルウィズを用意します。これでコードレス操作が可能です。軽くて楽です。

参考になればと思いますので、納品書を写真にとって置いたものをアップします。iPad撮影なのでダメ画質で平謝りモノですが、読めると思います。

コントラとスーパーファイル.jpg
※歯科材料・器具は大切に扱いましょう(高いから)


さて、抜去歯牙で練習するとしましょう。
具体的な使用方法やコツなどがわかれば記事にして行きたいところです。
 
posted by ぎゅんた at 17:58| Comment(0) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月13日

感根処が続くと指が痛くなって困る

GPのある根管にファイルを通す時に、力をいれて上下1mm運動させ続けたりファイルを回し続けたりウォッチアンドワインディング・ムーブメントを続けたりターンアンドプルを繰り返したり…人差し指と親指に力が加わり続けると指作が悲鳴をあげます。古いGPのくせになんであんなに硬いんだと怒り心頭の境地に入ることもしばしばであります。開かない時はもう涙目の心境。

GP除去のお供には、GPソルベントやユーカリソフト、ちと危険かもだが比類なき溶解力を誇ると噂のクロロホルムを使いたいところだが、勤務先にはないのである。溶解の手立てがない以上、器具を用いて物理的に除去する他にないのであります。こうなるとまず手用ファイルが第一選択となるわけでして、ファイルでGP除去を行いつつのネゴシエーションを遂行せねばならない。根管口付近が漏斗状に拡大されているケースであれば、ゲイツドリルである程度まで除去ができて楽なのだが、全ての根管口が漏斗状に拡大されているわけがないのは皆様も経験上、痛いほどご周知の通りであります。

そんなわけで指が痛くなっちゃう感染根管治療、その治療の成績はいかほどなものか。成書をみる限り、やはりよくない。というか、ひとまず先進医療だと我々が思っている米国式エンドだと感染根管治療はほとんど行わず、即外科処置(根尖切除等)に踏み切ったり抜歯してインプラントにするとも聞く。

これはアメリカの歯科医師のエンドの腕がプアなのではなく、そもそも感染根管の治療というもには、やはり予後の見通しが悪い、感染根管治療は難しい、治りが悪い、などの要因を持つからだろう。合理的な考え方をする国民性なので、「ダメなもんは(いくら根管を攻めても)ダメ」と割り切っている面もある。
日本人はこの辺、ファジーと言っていいか分からんが、「騙し騙しでも、残せるのであれば…」と考える向きがある。

また、ダメとわかっている歯でも、抜歯せずに歯を残そうとする姿勢を見せると「この先生は良医」と判断する雰囲気がある。これは誰しも感じていることではなかろうか。これをずる賢く利用すると、とにかく抜歯をしない姿勢を患者に見せればよいのである。だが、抜かなくてはならない歯を抜かずにおいておけば顎骨が炎症でダメージを受けるし、免疫力を働かせ続けることになる。たとえ痛みがなくても生理的に正しい状態ではないからである。だが、ひとまず痛みがなければそれで良いとする患者は多いし、現実的には我々歯科医も患者が痛みを訴えなければひとまず安心するのである。患者も歯科医師も、生体の治癒力と生命力、ひいては免疫力に多大にお世話になっている、と言える。

もしもその免疫力の恩恵を打ち破るほどの病原性病変が根尖に在ることになった場合、不快症状が一進一退になるか、膿瘍と瘻孔がいつまでも存在し続けるか、軽い違和感をもつか、痛みを引き起こすか…おおよそこのような状態になる。痛みがなければまだよいが、いつ痛みが出るか分からない。不発弾を顎骨内に抱えているようなものである。
このような歯牙があれば、まず感染根管治療を始めることになろうが、術者のやる気に反して治療に対する反応が悪いことが多いように思う。勿論、違和感や痛みがピタッと引くこともあるが。治療を始めてすぐに予後が予想出来るようになりたいものだ。


ダラダラ書くだけ書いてまとめもなく終わる…


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posted by ぎゅんた at 23:57| Comment(0) | 根治(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする