総括:現時点で、積極的に導入する器具には思い至らず
スーパーファイルを使ってみてのポイント
1.自然に根尖までスーパーファイルは進むが、そのままネゴシエーションとなるとは限らない
2.#15を用いた根尖部の拡大は楽。コードレスなのでなおさら
3.「あかない根管」を開ける器具ではない
4.弾力あるステンレス-スチール製だが、無理やり操作すればファイルは折れる
当初、この器具は#15のスーパーファイルがそのまま根管形態に沿って根管口から根尖を通すものだと思っていた。手用ファイルで緊張感まみれながらネゴシエーションするストレスから開放されるのではないかと思っていたのである。
エンドの確かな原則で述べているように、初めて根管に挿入するファイルは、いかなことがあっても根尖まで通したい(ネゴシエーション)と考えている。そのときの手段のファーストチョイスが#10の手用Kファイルであり、一度挿入したら押し引きの動作で根尖まで通すことを目指すのである。
だが、臨床で触れる根管の中にはこの動作で根尖まで通らない根管もある。大抵は生理学的根尖孔の一歩手前でファイルが引っかかっているので、ファイルにプレカーブを付与して慎重に探ると通ることになる。しかし、こうした事態のときの私の心中の焦りとプレッシャーはかなりのストレスである。抜髄根管であれば、ネゴシエーションが達成できなくとも、新たな感染を歯冠側より起こさなけば痛みを起こすこともないのである(歯髄は苛めなければ痛みを訴えない)が、重度の感染がある場合はネゴシエーションが必須だろうと考える。
手用Kファイルを用いたネゴシエーションを、ほぼどのような根管でも達成出来るのであればよいが、まだまだ未熟さがゆえに不確実性がつきまとう。ならば、機械の手を借りて、それがファイルの本来の働きにより導かれるようにファイルが根尖に向かうのであれば、また、用いるファイルが無理な回転を与えなければまず折れないステンレススチールファイルであればと考えた。そこで存在を知ったのがツイストコントラとスーパーファイルだったわけである。製品情報を調べ、ツイスト角が60度のものを用意したのは過去の記事のとおり。本当は30度のものがベストとのことだったが、現在は手に入らないので仕方が無い。
抜去歯牙で練習
抜髄の機会の多い第一大臼歯を練習用の抜去歯牙として得るのはなかなか難しい。多いのは智歯である。しかし智歯は根尖が常識はずれの湾曲を呈していたり癒合していたりして、ポピュラーな抜髄ケースとして練習に望みにくいのが欠点である。根管の無秩序さが酷いのである。重度歯周炎で抜去された歯は、大抵は高齢者であり、根管が狭窄しているが、これは練習にもってこいである。
いずれにせよ、上下7-7の無傷に近い抜去歯牙は貴重なので、あだおろそかに扱ってはならない。練習といえどやり直しのきかない処置をするつもりで緊張感をってあたらるべきである。歯科治療のほとんどもまた、可逆性に欠けるものであるが。
う蝕の除去と髄腔穿孔、天蓋除去をして根管口を確認。
スーパーファイルを挿入する前に、根管口明示は徹底的に行う。
ゲイツの#2.3.4を用いる。ダイヤモンドバーなどは用いない。
エンド三角の除去やストレートラインアクセス形成を目指す。
明示の後、スーパーファイル#15を1000-2000rpmで稼働させながら根管へ挿入する。1500rpmで練習。根管へスーパーファイルが自然に挿入されて行くところまで軽いタッチで操作。力で押し込こむものではない。ファイルは途中で根尖側に進まなくなるので、そうしたら根管の外側に向けて(根管のストレート化狙うため)1引き上げる。次に挿入すると、この引き上げた時点よりもより根尖側までファイルが入る。ファイルがコツンと止まるところまで繰り返す…その地点が根尖端狭窄部である(としている)。
確かにスーパーファイルは、この動きで根尖側に進んで行くのだが、そのままファイルが最狭窄部を穿通してネゴシエーションされるわけではない。極めて単純な前歯単根管であればスーパーファイルがコツンという抵抗もなく出てくることもあるが…器具から伝わる感覚だけで判断するのは少し不安を覚える。
コツンとしたところを素直に根尖狭窄部ないしは生理学的根尖孔と認めればよい。そしてそこまでの通路が確保され、有機物が徹底除去されれば、後感染がない限り問題も生じまい。
だが、#10Kファイルをまず穿通させ、上下1mm運動で通路を確保することをルーチンにしている私にはどうも心理的に許容し難い。
ならば、その後で#10Kファイルを通せばいいではないかと思うだろうが、ステップが出来たのか、根管が穿通しなくなっているのである。これはどうしたことか…使い方を間違っているのだろうか?
逆に#10Kを穿通させてからスーパーファイルを挿入させると、奇妙なことに通らないことがある。やはり、使い方を間違っているのだろうか…
手用ファイルでネゴシエーションした後に、根尖部をスーパーファイルで拡大したいのだが、その後ファイルが通らなくなりそうで心配になる。破折の不安が小さく、疲労も少ないが、手でやって出来ていることを機械でやるというのはどうなのかとも思う。
最近の自分のスタンダードな方法、
手用ファイルで根尖にレッジやステップを作らぬよう「押し引き操作」を中心にファイルを操作して根管の通路を確保しつつ#15Kで拡大
#15Hファイルでファイリング拡大
ゲイツバーで根管口付近を再度拡大明示
手用ファイル#20、#25でアピカルまで(アピカルシートを形成する意識はない)
ニッケルチタンファイル(松風Mtwoファイル)を、#15-#20-#25の順で作業長まで、拡大ではなく、形成する感じ(実際はテーパー分が拡大されている)
こうすると、06°テーパードGPで根充するのならそのまま#25以上のサイズに決定出来るし、通常の側方加圧充填でも、アピカル部分を形成すれば、テーパーがついている分、楽に側方加圧充填に移行できる。06°テーパーでの企画GP根充は楽であるので、基本この方法をとるぐらいでよいのである。
ただ、根尖部に湾曲があるとMtwoファイル(限らずニッケルチタンファイルは)は追従して形成する時の破折のリスクが高くなるので、手用ファイルで仕上げる方法をとっている。
湾曲根管でのファイル破折を避けるため、新品のニッケルチタンファイルを使うというなら大丈夫かと思うが、個人的にはそこまでニッケルチタンファイルを信用していない。常に新品使用が理想だがコストもかかるので保険診療には向かない。
ニッケルチタンファイルは、あくまでも根管充填前の器作りであると考えるスタンスは変わらないのである。
余談
SEC1-0を代表する、上下0.5mm運動のコントラでも、稼働させながらファイルを根管に挿入すると同じようにファイルが根尖に向かう。引き上げて再度挿入すると根尖に向かうのも同じ。ただこちらはマイクロモーターにつけるので重いしコードレスではない。注水できるのはありがたいのだが。
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