長所は
・コントラアングルがあればよい
・なかなか丈夫そうな弾力(根管追従性は弱いかもしれないが、破折しない設計が第一である)
・感染根管治療時のGP除去に使える(エンジンリーマーよりは安全かも?)
・#15/05で一回、作業長まで形成するだけでも、その後の手用ファイルでの拡大形成の抵抗感が減少し楽になることが実感できる
つまり、導入のハードルが低い製品なのである。
短所をあげるとすれば
・ラバーストッパー依存での操作
であろうか。
他社の製品に比べて切削効率が優れている/劣るの比較はなんともいえない。
後発品なので劣ることはないだろうが。
現時点で使用しているのは、ベーシックなキットである15/.05、20/.06、25/.06 の三種類である。
大きな根管形態用、歯冠側拡大用もラインナップされているが購入していないので使っていない。
以前の記事にも書いているが、ネゴシエーション後の拡大の前には根管口付近の十分な拡大が必要であるとして、#15のKファイルで作業長を確認したのちに手ゲイツドリルのNo.2>No.3>No.4>No.3>No.2で根管口明示を行うと書いた。Mtwoファイルの導入によってこの作業を省略してよい訳ではないが、この後に15/.05を作業長まで一回通すだけで、その後のファイル操作が楽になるのである。
楽になる、というのは、ファイルに対する必要以上の抵抗感が少なくなるということであるから、ニッケルチタンにしろステンレス-スチールにしろ、ファイルの破折のリスクを減じられるのである。
ところで、手用ファイルを根尖まで到達させるとき、上下運動だけで無理なときはどうしておられるだろうか。普通に時計回りにリーマーやKファイルを回転させているのではないだろうか。そりゃそうですよね。実習で1/3〜1/4以上回転させるな!と言われたことと思いますが、そんなの研修医になったときに「遵守していられるか!」と思いましたよね?
手用ファイルを回転させて使うことに熟達している先生は、やはり破折のリスクは常に考慮しなくてはならないから、根管の拡大形成を、楽で破折のリスクが小さい作業となるようにしなくてはなるまい。
その意味で、#15の作業長に合わせた 15/.05ファイルを一回だけでも通すだけで破折リスクを下げられるのは大きかろう。そのとき、ラバーストッパーの位置を間違えてオーバーインストゥルメントしたとしても#15のファイルが一回、根尖孔外に突き出た程度なのであまり大きな問題にはならないだろう。
ところでこの製品、名前がMtwoと風変わりである。松風だからと言ってしまえばそれまでかもしれないが、ちょいと気になったのでメーカーに問い合わせてみることにした。また、併せてファイルの使用回転数についてや破折を防ぐための留意点、カタログに「形成」とあるが、「拡大」の意図はないという解釈でよいのかについても質問した。
返事がきたので抜粋しよう。この製品を導入される先生方の一助となれば幸いです。
根管が「根幹」になってるぞ。しっかりしろ!
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ぎゅんた 先生
拝啓 時下、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は松風製品をご愛顧いただき誠にありがとうございます。
お問い合わせいただきました”Mtwoファイル”につきまして、下記のとおり回答申し上げます。
@製品名
開発者二名の頭文字Mをとり、このような名称になりました。
A破断を防ぐための留意点
トルク及び回転速度が制御可能な歯科用根幹拡大装置を用いて、下記表の条件で使用することと無理な力で押し当てないことが重要です。

使用回数については症例にもよりますが、最大8回となっております。
また、消耗度を外観で見極める際は、歯科用ルーペやマイクロスコープといった拡大鏡をお使いいただき、
以下の不具合を確認した場合、直ちに廃棄してください。
・ファイルの屈曲(塑性変形)
・スパイラル部の変形(らせんの伸び等)
・切削エッジの破損及び磨耗
・ISOカラーコードの褪色
・腐食 ・・・etc
B使用用途
本製品は根幹の拡大、根幹壁を平滑にすることを目的としてご使用いただけます。
使用方法の詳細は添付文書をご参照下さい。
簡単ではございますが、ご質問の回答とさせていただきます。
また、別途ご質問、ご意見をいただく場合、お手数ですが弊社のデータ管理上
代表のEメールアドレス(webmaster@shofu.co.jp)宛にご送信下さい。
今後とも、なお一層のご愛顧のほど、宜しくお願い申し上げます。
敬具
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Mtwoファイルの商品名の謎は、開発者二人の頭文字だった!
松風は相変わらずファンキーな会社ですね。
昔お世話になったことをさしひいても、個人的に好きな会社です。
使用回数が最大8回というのは、どのような使い方をしてのものか今ひとつ分かりませんし、保険診療でペイするなら、流石に8回で破棄していては問題外の外です。マイクロやルーペでファイルを確認して破棄を決定するのが現実的ですかね。
やはりニッケルチタンファイルは、いかなる製品も拡大に用いないぐらいの姿勢で利用するのがよいのでしょう。少なくとも15/.05を使用する前にはH#15のファイリングとゲイツによる根管口明示を行い、ニッケルチタンファイルへねじれストレスを可及的に小さくしたいものです。拡大に使えると謳っているのは、おそらく破折のリスクは承知のうえでのことでしょう。「根管形成用電動式歯科用ファイル」じゃあ売れなさそうですものね。
そんなわけで、これからはMtwoファイルを使っていこうと思ってます。おわり マル
外部リンク
松風Mtwoファイル