感染根管治療における我々歯科医師の目的は、根尖病変を治癒に導くことである。そのことで、無髄歯が生体に受け入れられ、機能を営むことができるようになる。これは、根管系が生体に対し無害となり、細菌・病原菌らのサーバーが消失することである。
歯性病巣感染説は現在では否定された見地なのか、俎上にあげられることも稀である。(もし貴方がその世界を紐解こうと思うなら⇒虫歯から始まる全身の病気―隠されてきた「歯原病」の実態
痛みを伴うか伴わないか
当院実習の時分、根治の見学(アポ表にRCTとあったもの)があった。結局、指導医の手元は見えないから何をやっていたのか、具体的はサッパリであったのだが。見学後に「排膿路の確保をしたから痛みが出る、痛みが出るのは嫌だけれど、これを行わないと治せない」と説明を受けた。
浅学無知なる学生ぎゅんたは「膿を出すと治るのか。それで痛みが出るの?」と思ったのであった。
これは、今にして思えばこのように考察されようか。
まず、この見学ケースの患者は、急化perであった。根尖に膿瘍があり、内部の圧力がこう進し自発痛があったであろう。感染根管治療を開始した指導医は、まず根管の通路を確保する意味で根尖までファイルを通したはずである。すると排膿をみた。おそらく、排膿が自然に止まるまで待ったであろう。これで内部に圧力は抜けるように下がり、自発痛の緩和が見込めるようになった。
更に、生理学的根尖孔から解剖学的根尖孔までの0.5-1.0mmの歯質を感染根管象牙質として、#20-30程度の号数ファイルを通して削合除去しただろう。また、ここまで開けると排膿路が確実である。
これらをして、指導医は「痛みが出るよ、でも治すための処置なのですよ」と説明したのだろう。
治療上、必要な医療行為を行って術後に痛みが出ることは当たり前のように起こる。しかし治るために避けて通れないのであれば、痛みが出ることを恐れてはいけない。大切なのは、痛みが出るのであれば、どの程度のどのような痛みがどれだけ出るのかを説明できることである。そして、痛みが出るからと達観せず、できる限り痛みを小さくするよう見識と技術を磨くことである。
…ここ最近の感根処の予後が思わしくないケースが多いので、思うところありと書いてしまった。しかし世の先生方は感染根管治療をどのように捉えて処置をしているのだろうか。こんなに難しく評価されない歯科治療もないと思うのだが。そして、痛みが出ない人は不思議と全く出ない不思議さがある治療である。
今のところ、根管口上部の軟化象牙質を徹底除去し、生理学的根尖孔を可能な限り拡大せず正確な処置をすれば痛みが出にくいと知っている。
だが、感染根管治療では最初から根尖が壊れていたり、積極的な拡大が必要だったりするから困る。完治しない根を生体の許容範囲内に落とし込めるのが感染根管治療なのだろうか?
痛みが出ないコツ類を知り得ている先生は是非、ご教示下さい。