2012年06月21日

感根処で痛みが出るのは2/2

さてここに治療を始める感染根管があったとして、治療を開始する。
感染根管治療における我々歯科医師の目的は、根尖病変を治癒に導くことである。そのことで、無髄歯が生体に受け入れられ、機能を営むことができるようになる。これは、根管系が生体に対し無害となり、細菌・病原菌らのサーバーが消失することである。

歯性病巣感染説は現在では否定された見地なのか、俎上にあげられることも稀である。(もし貴方がその世界を紐解こうと思うなら⇒虫歯から始まる全身の病気―隠されてきた「歯原病」の実態)。感染根管を抜歯して全身疾患が治癒した例は、経験したことはない。現実的には、感染根管があっても、保存ができるかできないか・痛みを伴うかともなわないかがフォーカスされる。だが病変が生体にとってやさしいことは決してない。感染根管をみるやいなや抜歯や治療に急ぐことはないだろうが、治療をするのなら、治療前よりも生体にとって無害にしなくてはならない。


痛みを伴うか伴わないか
当院実習の時分、根治の見学(アポ表にRCTとあったもの)があった。結局、指導医の手元は見えないから何をやっていたのか、具体的はサッパリであったのだが。見学後に「排膿路の確保をしたから痛みが出る、痛みが出るのは嫌だけれど、これを行わないと治せない」と説明を受けた。
浅学無知なる学生ぎゅんたは「膿を出すと治るのか。それで痛みが出るの?」と思ったのであった。

これは、今にして思えばこのように考察されようか。

まず、この見学ケースの患者は、急化perであった。根尖に膿瘍があり、内部の圧力がこう進し自発痛があったであろう。感染根管治療を開始した指導医は、まず根管の通路を確保する意味で根尖までファイルを通したはずである。すると排膿をみた。おそらく、排膿が自然に止まるまで待ったであろう。これで内部に圧力は抜けるように下がり、自発痛の緩和が見込めるようになった。
更に、生理学的根尖孔から解剖学的根尖孔までの0.5-1.0mmの歯質を感染根管象牙質として、#20-30程度の号数ファイルを通して削合除去しただろう。また、ここまで開けると排膿路が確実である。

これらをして、指導医は「痛みが出るよ、でも治すための処置なのですよ」と説明したのだろう。

治療上、必要な医療行為を行って術後に痛みが出ることは当たり前のように起こる。しかし治るために避けて通れないのであれば、痛みが出ることを恐れてはいけない。大切なのは、痛みが出るのであれば、どの程度のどのような痛みがどれだけ出るのかを説明できることである。そして、痛みが出るからと達観せず、できる限り痛みを小さくするよう見識と技術を磨くことである。


…ここ最近の感根処の予後が思わしくないケースが多いので、思うところありと書いてしまった。しかし世の先生方は感染根管治療をどのように捉えて処置をしているのだろうか。こんなに難しく評価されない歯科治療もないと思うのだが。そして、痛みが出ない人は不思議と全く出ない不思議さがある治療である。

今のところ、根管口上部の軟化象牙質を徹底除去し、生理学的根尖孔を可能な限り拡大せず正確な処置をすれば痛みが出にくいと知っている。
だが、感染根管治療では最初から根尖が壊れていたり、積極的な拡大が必要だったりするから困る。完治しない根を生体の許容範囲内に落とし込めるのが感染根管治療なのだろうか?

痛みが出ないコツ類を知り得ている先生は是非、ご教示下さい。
posted by ぎゅんた at 19:36| Comment(1) | 根治(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月18日

感根処で痛みが出るのは1/2

根尖病変があるからと根治を開始する。
髄腔内の有機物・軟化象牙質を除去しつつ、根管の位置を確定する。
根尖孔までの通路は確保しなくてはならないから、#10〜15のファイルを根尖まで通す(開ける)。滲出液、出血、排膿らが自然排出されてこないかをみる。GPなり壊死歯髄組織などを取り除いていく。

この治療後に痛みが出るか出ないかはなんで決まるのだろうか?

たいてい、術後痛は出るものだが、患者によっては「全く、何ともありませんでした」とあっけらかんとした人もいる。同じことをしているはずなのに、「痛くて大変でしたわ」と、暗に非難めいたことをいう患者もおられる。たいていは、その中間、「術後しばらくは痛かったが、すぐに引いた」といものである。

たまにある術後痛で恐ろしいのは「痛くて痛くて、鎮痛剤を服用んでも効かないぐらいだった」というケースである。これは、ほとんどの先生が経験されているのではなかろうか。経験上、無症状のper像のある根管を触った時にでることが多く、治療が終わってすぐに痛みを訴えている。下手をすると治療が終わったとユニットを起こしたあたりで自発痛が出ていることもある。特徴は即時的で強烈な痛みであり、ロキソニンなどのNSAIDsによる鎮痛効果も乏しい。どの程度の痛みかは想像するしかないが、予約外に「痛いのでみて欲しい」と飛び込んでくるので、かなり激烈なる痛みと思われる。これは、機能的な歯内治療―痛みの防止と残した歯の価値を高めるためにに詳しいが、アレルギー反応による痛みだという。従って抗ヒスタミン剤の投与が適応になる(注:抗ヒスタミン剤の歯科の適用はない)。私の勤務先には抗ヒスタミン剤は常備されていない。このような痛みが出た場合は、根尖部には機械的刺激を与えず、生理食塩水で洗浄し、開放させておくことになる。痛みは、この痛みが出たあとに根尖部をいたずらに触らなければ半日で収まることが多い。起きる時は起きてしまう痛みなので、感根処を行った初回には、術後の痛みについてはしつこいほど説明しておくことである。痛みは出ないに越したことはないが、出る時は出るものだ。説明しておいて損はない。


自覚症状がある場合はいざしらず、病巣があるものの無症状の場合に処置を開始して痛みが出ると患者さんにとっても術者にとっても辛いものである。
感根処自体が本来、成功率の低い戦いであることは周知の事実。このことから、「根尖病変はあるものの無症状の歯」の場合は、説明の上、処置を急がずに経過をいるの良いのではないかと思っている。それで違和感、痛みがでるようならば、処置に踏み切ることに迷いもない。違和感や痛みが出ないのであれば、写真上は病巣があるにしても、生体の免疫力バランスがとれているのだろうと判断できる。少なくとも病巣が大きくなっていかなければ急いで処置に踏み切ることはない。治療を開始したからと言って、我々はすべての根を治癒に導けるものではない。下手をすれば亀裂を発見するか人為的な破折を生じさせて抜歯となることもある。そうした場合に患者は納得するだろうか。


根管治療済の歯は、患者の日常生活の大部分において支障なく噛めているのであればゴールしているものと思っている。根管治療を施した歯が、健全歯と全く同じような感覚で噛めるほどに戻ってくれることを期待するけれども、歯髄に勝る根管充填材はないのである。
posted by ぎゅんた at 20:04| Comment(0) | 根治(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする