注)私見だらけなので、間違っているところがあると思います。ご指摘ご指南をお願います。
作業長と拡大号数を一致させるには根充予定の号数のファイルが作業長まで達すれば、規格通りの根管形成が完了したことになり、マスターポイントがタグバック付きで作業長通りにアピカルシートに達する…ことはないのである。
例えば、#40で作業長まで拡大したとしよう。
これは、例え話として具体的に説明すると「#40のKファイルが、ファイルを回すことなく、根尖に向けて押していくと作業長まで達する」状態だと思ってもらいたい。ISO規格通りなら、この状態で#40のマスターポイントを挿入すれば、ファイルと同じようにタグバック付きで作業長に達しそうなものだ。しかし現実は「タグバックは得られるが作業長まで達しないドアンダー」になる。ファイルとマスターポイントの大きさに製造工業的な誤算があることを考慮しても、やはりこうなる。
ファイル(ステンレススチール)とマスターポイント(ガッタパーチャ)では剛性がダンチだから、マスターポイントを押し込んで挿入しても、「しなって」しまってファイルよりは奥まで挿入できない。であるから、号数通りのマスターポイントで根充するのであれば、ファイルがスカスカなぐらいに拡大するぐらいが「丁度よい」ことになるだろうと推測できる。
人によっては、根充予定の号数のワンサイズ下のファイルでアピカルシートを形成するケースが見られる。抜去歯牙で何度か確認したが、実際にこれを行うと、手早く予定号数のマスターポイントが作業長に入るのである。しかし、タグバックは乏しくなるかなくなるようだ。さて、どうしたものか…
なお、アピカル付近を壊さない限り(根尖孔を壊さない限り)は、たとえサイズを1号下げたマスターポイントを用いてもオーバーすることはない。
マスターポイントの試適は必ず行う。オーバーになると、根管からアクセスしてのGP除去がほぼ不可能になる。最悪、アンダーは許容してもオーバーにはしないほうが良いだろう。そして、もしアンダーになるにしても一ミリ以上のアンダーはよくない。根尖が無菌状態ならいいのかもしれないが、せっかく形成してあるのだから、そこまで緊密に充填させないと気持ちが悪いものだ。
そして出来るならトライは行うべきだ。作業長通りにポイントが挿入されていれば、例えばX線上でアンダーに見えても臆することもないのである。
あの子が欲しい、タグバックが欲しいタグバックの有無が根充後の予後の成績にどれほど影響を与えるかは聞いたことがない(在るのかな?)
あくまでも個人的な考えなのではあるが、タグバックはあった方が緊密な封鎖の点で優れるのではないかと思う。そしてまた、タグバックの獲得に固執するあまりにアンダーにしてしまい、かえって予後を悪くしている危険性があることも自覚している。学生実習では、うちの班はマスターポイント試適の際にタグバックが認められなければ殴る蹴るリトライであった。そんな経験があるので、マスターポイントにはタグバックがないと不安をおぼえる。
手用Kファイルだけで根管の拡大と形成を行うと、タグバックを得るのはどうも難しいように思う。ニッケルチタンであれば、テーパーが06度で形成が仕上がり、その形になっているGPを入れればテーパー由来のタグバックが得られるようになっている(製品にもよるが、概ね、の話)。
ニッケルチタンの場合は、明確にアピカルシートを形成するものではない。本来の根管孔は保存した上で、テーパーが06度の根管が機械的に形成され、それに合致したGPがそのまま収まる。タグバックは、形がほぼ一致していることから得られるにすぎない。しかし、根管充填の目的は、無菌化させた根管を、根尖の最狭窄部まで緊密に閉鎖させることにあるから、根尖にGPがストップするシートを人為的に形成させる方法は実は根管にとっては不自然なものかもしれない。それにもまして、シートを作るにはファイルを回転させることになろうが、曲がった根管でファイルを回せば本来の根管から逸脱してしまう。これは特に#25以上のファイルで要注意の事項である。そもそも根管自体が、教科書のイラストのようなストレートに在るわけではない。臼歯は言うに及ばず前歯であっても、根管は曲がっているものと認識せねばならない。号数は問わず、手用ファイルは回さない方がよいのは間違いない。
しかしここではひとまず手用ファイルを用いての根充について述べるので、ニッケルチタンはおいておこう(エンドウェーブとプロテーパーしか触ったこともないし)。
どうにかして手用ファイルでタグバックありで作業長通りに根充させたい。そしてその方法は容易で確実でなくてはならない。そしてそのためには、今のところ、アピカルシート形成のために手用ファイルを回さないといけないと思われる。
なので、今のところ、手用ファイルを用いている以上、回さないことが良いと理解しつつもファイルを回してアピカルシートを形成する方法をとるものとする。
マスターポイントが作業長に達しタグバックも同時に得られるためには、同号数のファイルを回さずして作業長に持っていくことができることが第一である。ファイルは時計回りに回せばネジと同じで根尖に移動する。移動する時に根管壁に切り込んでいる。つまり、挿入しているファイルの号数の大きさになっていない状態である。この時点では同号数のマスターポイントは作業長まで入らない。タグバックは得られても、それは不完全な状態で食い込んでいるに過ぎない。ある程度拡大を終えた状態で、アピカルシートの形成に入らなくてはならない。手用ファイルは02テーパーと「キツイ」」ので、これでアピカルシートを形成にすると、おおよそ自動的にアピカルカラーが出来上がる。アピカルカラーがマスターポイントを把持してタグバックとなる。
そもそも、アピカルシートを形成するには?
パーフェクト歯内療法を紐解くと、こう書かれている。
〜 作業長まで入ったら、この位置を保ちながら、力をいれず(押し込むのではなく)、軽いタッチで4回ほど回転させてください。これで、そのファイルの太さのアピカルシートが生理学的根尖にできたことになります。 〜これが成立するには、少なくとも以下の条件が必要である。具体例で述べる。
・ファイルを作業長までいれるとき、まわさずに、根尖方向に押して行けば達する(キッチリ根管の拡大がなされていること)
・作業長まで達した時、ファイルのヘッドを指で根尖方向に押してみたとき、突き出しがない(根尖孔が壊れていない、最終拡大号数をよりも小さいこと)
この二つを満たさない時は、そのまま同号数のマスターポイントを挿入してもアンダーかオーバーになると考えれば良い。
個人的に行っている手法として、ファイルを軽く歯冠側に引きながら10回ほど回転させている。歯冠側にひきながら、とあるのは、ファイルは削る方向、すなわち時計回りに回せば根尖方向に進んでしまうからである。うっかりアピカルを壊したくないのである。
適切な根管口明示がされており、最終拡大号数のファイルが作業長まで入るなら、回転させる時に掘削による抵抗感は小さいはずである。Hファイルを除き、このような時はファイルを1/3~1/4以上回転させても破折のリスクは殆どない。
同号数のマスターポイントを作業長まで挿入させ、タグバックがあることを確認しよう。この時、マスターポイントを挿入していくと、アピカルカラーのエリアで「たわむ」GPは押し返される抵抗にあう。なので、マスターポイントを挿入する際は、根充用ピンセットでマスターポイントをしっかり把持した状態で根尖に向かってギュッと押し込む必要がある。その状態で作業長まで達すればタグバック付きになる。