2012年05月10日

シーラーでラテラル

シーラーは、古典的なキャナルスで良いと思う。
しかしユージノール含有なので、その後のレジンコアやKP-CRを考えると使用を躊躇う向きがある(大丈夫と聞いたこともあるが、仄聞に過ぎない)。
ユージノールのアレルギーも含めて、キャナルスNにするのが無難か。
勤務先では、以前は東京歯材社の取り扱いだったFRを使用していたが、今はキャナルスNになった。
FRに比べて操作時間が大幅に伸びてくれて使いやすい限りである。


シーラーはマスターポイントにたっぷりつけてゆっくり上下させながら作業長までもっていく。
s_DSC_0003.Jpg

s_DSC_0005.Jpg
この時、多少ともなりシーラーが根尖より逸出することが多いので、患者さんには「お薬を根の先まで送り込みますから、少しチクっとしますよ」なり、なんらかの声掛けを行う。


スプレッダーの挿入は、根管の彎曲を考えて行う。挿入の部位によっては、マスターポイントを浮かせてしまう力が作用することがある。
how to spledder.Jpg
※この画像は機能的な歯内治療より抜粋したもの(ご内密に…)

こんな感じかしら
s_DSC_0015.Jpgs_DSC_0016.Jpg

また「側方加圧」の名前を意識して、スプレッダー自体を壁に押し当てるように加圧すると、マイクロクラックが生じ、将来的な根管の破折リスクの上昇を招くので行わないこと。
スプレッダーを根尖方向に挿入すること自体が側方への加圧だと認識しなくてはならない。


ヒートプラガーの動かし方、熱し具合を確認する

長めに熱して、根管口付近で壁に押し付けるように切って行く。ヒート具合が適切なら、GPとシーラー(キャナルスN)が沸騰するように抵抗感なく切れる。大臼歯で複数根を一気に綺麗に処理できると快感である。
機材によって微妙に必要な温度が異なるだろうから、抜去歯牙で確認しておかねばならない。
ガッターカットがあれば楽で安全だと思う。

プラガーによる加圧は、トントンするのではなく、グッ…と根尖にむかって圧接する。
このとき、シーラーが根尖より少量溢出することがある。当然、わずかな痛みを伴うので声かけを忘れずに。
posted by ぎゅんた at 19:54| Comment(3) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

作業長とタグバックについて

注)私見だらけなので、間違っているところがあると思います。ご指摘ご指南をお願います。


作業長と拡大号数を一致させるには

根充予定の号数のファイルが作業長まで達すれば、規格通りの根管形成が完了したことになり、マスターポイントがタグバック付きで作業長通りにアピカルシートに達する…ことはないのである。

例えば、#40で作業長まで拡大したとしよう。
これは、例え話として具体的に説明すると「#40のKファイルが、ファイルを回すことなく、根尖に向けて押していくと作業長まで達する」状態だと思ってもらいたい。ISO規格通りなら、この状態で#40のマスターポイントを挿入すれば、ファイルと同じようにタグバック付きで作業長に達しそうなものだ。しかし現実は「タグバックは得られるが作業長まで達しないドアンダー」になる。ファイルとマスターポイントの大きさに製造工業的な誤算があることを考慮しても、やはりこうなる。
point&WD.JPG

ファイル(ステンレススチール)とマスターポイント(ガッタパーチャ)では剛性がダンチだから、マスターポイントを押し込んで挿入しても、「しなって」しまってファイルよりは奥まで挿入できない。であるから、号数通りのマスターポイントで根充するのであれば、ファイルがスカスカなぐらいに拡大するぐらいが「丁度よい」ことになるだろうと推測できる。
人によっては、根充予定の号数のワンサイズ下のファイルでアピカルシートを形成するケースが見られる。抜去歯牙で何度か確認したが、実際にこれを行うと、手早く予定号数のマスターポイントが作業長に入るのである。しかし、タグバックは乏しくなるかなくなるようだ。さて、どうしたものか…
なお、アピカル付近を壊さない限り(根尖孔を壊さない限り)は、たとえサイズを1号下げたマスターポイントを用いてもオーバーすることはない。

マスターポイントの試適は必ず行う。オーバーになると、根管からアクセスしてのGP除去がほぼ不可能になる。最悪、アンダーは許容してもオーバーにはしないほうが良いだろう。そして、もしアンダーになるにしても一ミリ以上のアンダーはよくない。根尖が無菌状態ならいいのかもしれないが、せっかく形成してあるのだから、そこまで緊密に充填させないと気持ちが悪いものだ。
そして出来るならトライは行うべきだ。作業長通りにポイントが挿入されていれば、例えばX線上でアンダーに見えても臆することもないのである。


あの子が欲しい、タグバックが欲しい

タグバックの有無が根充後の予後の成績にどれほど影響を与えるかは聞いたことがない(在るのかな?)
あくまでも個人的な考えなのではあるが、タグバックはあった方が緊密な封鎖の点で優れるのではないかと思う。そしてまた、タグバックの獲得に固執するあまりにアンダーにしてしまい、かえって予後を悪くしている危険性があることも自覚している。学生実習では、うちの班はマスターポイント試適の際にタグバックが認められなければ殴る蹴るリトライであった。そんな経験があるので、マスターポイントにはタグバックがないと不安をおぼえる。

手用Kファイルだけで根管の拡大と形成を行うと、タグバックを得るのはどうも難しいように思う。ニッケルチタンであれば、テーパーが06度で形成が仕上がり、その形になっているGPを入れればテーパー由来のタグバックが得られるようになっている(製品にもよるが、概ね、の話)。
ニッケルチタンの場合は、明確にアピカルシートを形成するものではない。本来の根管孔は保存した上で、テーパーが06度の根管が機械的に形成され、それに合致したGPがそのまま収まる。タグバックは、形がほぼ一致していることから得られるにすぎない。しかし、根管充填の目的は、無菌化させた根管を、根尖の最狭窄部まで緊密に閉鎖させることにあるから、根尖にGPがストップするシートを人為的に形成させる方法は実は根管にとっては不自然なものかもしれない。それにもまして、シートを作るにはファイルを回転させることになろうが、曲がった根管でファイルを回せば本来の根管から逸脱してしまう。これは特に#25以上のファイルで要注意の事項である。そもそも根管自体が、教科書のイラストのようなストレートに在るわけではない。臼歯は言うに及ばず前歯であっても、根管は曲がっているものと認識せねばならない。号数は問わず、手用ファイルは回さない方がよいのは間違いない。

しかしここではひとまず手用ファイルを用いての根充について述べるので、ニッケルチタンはおいておこう(エンドウェーブとプロテーパーしか触ったこともないし)。
どうにかして手用ファイルでタグバックありで作業長通りに根充させたい。そしてその方法は容易で確実でなくてはならない。そしてそのためには、今のところ、アピカルシート形成のために手用ファイルを回さないといけないと思われる。
なので、今のところ、手用ファイルを用いている以上、回さないことが良いと理解しつつもファイルを回してアピカルシートを形成する方法をとるものとする。

マスターポイントが作業長に達しタグバックも同時に得られるためには、同号数のファイルを回さずして作業長に持っていくことができることが第一である。ファイルは時計回りに回せばネジと同じで根尖に移動する。移動する時に根管壁に切り込んでいる。つまり、挿入しているファイルの号数の大きさになっていない状態である。この時点では同号数のマスターポイントは作業長まで入らない。タグバックは得られても、それは不完全な状態で食い込んでいるに過ぎない。ある程度拡大を終えた状態で、アピカルシートの形成に入らなくてはならない。手用ファイルは02テーパーと「キツイ」」ので、これでアピカルシートを形成にすると、おおよそ自動的にアピカルカラーが出来上がる。アピカルカラーがマスターポイントを把持してタグバックとなる。


そもそも、アピカルシートを形成するには?
パーフェクト歯内療法を紐解くと、こう書かれている。

〜 作業長まで入ったら、この位置を保ちながら、力をいれず(押し込むのではなく)、軽いタッチで4回ほど回転させてください。これで、そのファイルの太さのアピカルシートが生理学的根尖にできたことになります。 〜

これが成立するには、少なくとも以下の条件が必要である。具体例で述べる。

・ファイルを作業長までいれるとき、まわさずに、根尖方向に押して行けば達する(キッチリ根管の拡大がなされていること)
・作業長まで達した時、ファイルのヘッドを指で根尖方向に押してみたとき、突き出しがない(根尖孔が壊れていない、最終拡大号数をよりも小さいこと)

この二つを満たさない時は、そのまま同号数のマスターポイントを挿入してもアンダーかオーバーになると考えれば良い。
個人的に行っている手法として、ファイルを軽く歯冠側に引きながら10回ほど回転させている。歯冠側にひきながら、とあるのは、ファイルは削る方向、すなわち時計回りに回せば根尖方向に進んでしまうからである。うっかりアピカルを壊したくないのである。
適切な根管口明示がされており、最終拡大号数のファイルが作業長まで入るなら、回転させる時に掘削による抵抗感は小さいはずである。Hファイルを除き、このような時はファイルを1/3~1/4以上回転させても破折のリスクは殆どない。

同号数のマスターポイントを作業長まで挿入させ、タグバックがあることを確認しよう。この時、マスターポイントを挿入していくと、アピカルカラーのエリアで「たわむ」GPは押し返される抵抗にあう。なので、マスターポイントを挿入する際は、根充用ピンセットでマスターポイントをしっかり把持した状態で根尖に向かってギュッと押し込む必要がある。その状態で作業長まで達すればタグバック付きになる。
posted by ぎゅんた at 14:48| Comment(3) | 根治(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月01日

God damn lateral condensation method  〜 現状、ラテラル根充にて感じる不具合、嫌なところ

思いつくことを書き出してみる。
おおよそ、このようなものではあるまいか。

1.単純にしんどい。特に大臼歯。狭い、辛い、唾液と舌との戦い f※ck!!
2.EMRで0.5でAPEXをとって、最終拡大号数で根充したが、アンダーになる。オーバーになる f※ck!!
3.バーチカルに憧れるが、結局いつまでもラテラルをしている自分が悲しくなる
4.ヒートエキスカ/ヒートプラガーで、根管口付近で切断するものの、大臼歯ではマスターポイントごと抜けてしまう根管があったりしちゃってf※ck!!
5.この世に俺に尽くしてくれる美少女はいないのか(現実逃避)

感情的な内容はともあれ、というか作業には個人の向き不向きもあれば好き嫌いもあるので、嫌いは嫌いであってもRCFはキッチリこなせるようにしていかねばならない。現状をマシにでみる改善点は必ずあるはずだ。


なぜ、しんどいのか?
臼歯部は上顎は手探りになり、下顎は舌と唾液の猛攻から根管内を保護しつつ根充を終えなくてはならない。手が大きく指が太い私にとっては、作業がし辛いだけでストレスを感じる。また、患者さんによっては頬が硬かったり開口量が小さかったりする。また、唾液の分泌が多い人や舌の大きい人、治療慣れしていない人はそれだけで作業が困難になる。ラバーダムによる隔離を行えば良さそうなものだが、現実的には嫌がられたりクランプが満足にかけられなかったり(カーボランダムで削って調整?とんでもない!)更に作業野が狭くなったりとで、案外に現実的ではなかったりする。そうでなければ、みんなラバーダムをしているだろう。するにしても、個人的には6までである。今の勤務先にはラバーダムシートがないので出来ない。
クランプだけを歯牙にかけて、ウイングの下にロールワッテを固定させることはよくある。ZOOによる簡易防湿は行えるが、臼歯部はやはり作業野が狭くなってしまう。指先を動かして行うこと(実現すべきこと)は分かっているのに、それが出来ない、し辛い。これは嫌なものだ。

なぜ、アンダーになるのか?
私を含め、現状、多くの先生はファイルを根管に挿入する時はEMRを併用しているのではないか。そして根尖端部には、ラテラルのためのアピカルシートが形成される。この時使用したファイルの号数と、マスターポイントの号数は規格されていて同じなので、則ち、アピカルシートを形成したファイルと同じ号数のマスターポイントをそのまま根管に挿入すれば作業長通りのジャスト根充になる!…とまあ、こう習ってきたっだろう。
が、馬鹿正直にそれに従って上手くいくことは少ないのではないか。私の場合は、大抵、アンダーになる。それならばと最終拡大号数を一つ下げると、ほぼジャストになる。だが、この時は長さはともかく、タグバックが得られない。これでRCF踏み切るのは心許ない感がある。が、タグバックがあっても、アンダーになってしまえば「根尖での緊密な閉鎖」に同じく不安が残る。実習では、歯が引っ張られるほどのタグバックを作れと教わったのを思い出したおれは、タグバックがあればひとまずRCFに踏み切る道を選んでいた。半数の症例でアンダーになった。アンダー/オーバー論争では、アンダーのがマシと考える俺は、ひとまず根尖が無菌的になっていればアンダーでも構わんだろうと思っていた。結果、抜髄症例の場合は、ドアンダーでも予後はよいが、感染根管だとどうも悪かった。いや、いまも悪いが…

アンダーになる原因は、作業長を確認せず、タグバックの有無だけで判断していることである。EMRで作業長(というかアピカルシートまでの距離)を求めたら、その長さでいないバックがある状態のマスターポイントを挿入したじょうたいでX線撮影(トライ)すれば確実である。この状態でアンダーに見えた場合は、根尖部へのセメント質の添加などで、解剖学的根尖孔と生理学的根尖孔の距離が離れてしまっているものだろうとわかる。
根尖付近での根充、いわゆるジャスト根充は、見た目的に美しいので求められる写真だが、実際的には根尖最狭窄部までが無菌的になっていて、閉鎖されていればよいのであり、見た目は見た目として、美しいと気分が良いが、絶対条件ではない。
とはいえ、それを知っていてもなんとなくアンダーだと気持ち的に落ち着かないのも事実であるので、トライは行うべきである。トライで写真上アンダーになら、そういう根管であるとの確証(諦め?)が得られるからである。

作業長通りの長さで緊密に根充できればよい。そしてそれはラテラルで可能であるはずだ。正しく根充できるようになれば根充が楽しくなり、ラテラルであることを恥じることもなくなるだろう。それでもラテラルに限界があるのならバーチカルの方法を習得すればよい。

ガッターカットという便利な器具がない現状、ポイントの切断はヒートプラガーである。ヒート雑用エキスカは使えない環境なので、ヒートプラガーの方法でやるしかない。切断の時にマスターポイントがついてきてしまうのは、そもそものマスターポイントが緩いか、プラガーに加えた熱が足らず、ポイントが溶けた状態がすぐに冷えてしまい、プラガーに機械的についていてしまっているものと思われる。こんなのは、学生の実習でしか見られないような陳腐な失敗だから起こしてしまうのは情けないことである。抜去歯牙でヒートプラガーの動かし方を考察しなくてはならない。こうすればこうなる、ということを予め確かめておけば、ポイントの切断時に迷いがなくなり、手早く行えるようになるだろう。

まとめ。
作業長と拡大号数が一致し、タグバックのあるマスターポイントをラテラル根充できるようにする。
作業長通りでタグバックが得られるのは、アピカルシート部の形成を具体的にどう仕上げればよいのかを抜去歯牙で確かめる。
そうして得られた抜去歯牙にラテラル根充して、ヒートプラガーでポイント切断時のコツを探る。


「正しい診断や化学的・機械的根管形成といった面倒な仕事を回避できるような、魔法の材料や方法はない(Bergenholtzら)」

iPadより送信
posted by ぎゅんた at 15:05| Comment(0) | 根治(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする