確かな原則・・・と、注釈&マイルール
原則1:抜髄根管にせよ感染根管であろうと、根管内にファイルを挿入する前に、歯冠〜髄腔〜根管口にみられるう蝕象牙質・感染有機物は完全に除去しておくこと意外に等閑にされている、最も重要なポイントではなかろうか。
根治ではファイルを根尖まで通すが、その際には、如何に慎重に操作しても感染物質を根尖孔外に押し出してしまう。根管治療後の痛みの原因の多くはここにある。
根尖孔外への押し出しは避けられないので、限りなく少なくなる操作を行うことは勿論のこと、押し出してしまう根管内物質ができる限り
弱いものであるようにしたい。
つまり、ファイルを根尖に通す前に、ファイル以外で取れるだけ除去しておくのである。
※前歯で根管口明示までおおよそ終わらせた状態。前歯部のアクセスは、教科書的な舌側からのものよりも、本来の根管の走性に倣ってラビアルアクセスの形にするのが良いと思う。こうしないと、ファイルのしなりが邪魔をして舌側の根管壁が触れないからである。原則2:virgin-canalにファイルを挿入する時には、#10のKファイルを用いる。このとき、決してファイルを回してファイルを根尖には進めないこと。ファイルは押し引きの動作で根尖まで通す。これで通路を確保する(negotiation)ファイルは根尖に向かってグッと力を込める感じで進める。
決して回さない。
狭窄していない根管であれば、根管壁に沿ってファイルが根尖孔から出るはずである。狭窄している根管であれば、根尖部でファイルが抵抗を持ってくる。
ファイルに込める力はずっと込めるのではなく、グッと根尖に向かって力を加えた後、一度力を抜き(ファイルを一瞬歯冠側に戻すようにした後)、再度根尖に向かって力を加える。押し引きの動作である。
そして
基本的には根尖に通すまで決してファイルを抜かない。一度抜いてしまうと二度と入らなくなることがある。それはファイルを抜いたからなので、抜かないことが大切なのである。
基本的にファイルは回さないが、狭窄した根管では、根尖付近でファイルにウォッチワインディング操作をキリモミのように行うこともある。だが、狭窄が著しく無ければ、通常は押し引きで根尖まで到達する。したがって、ファイルの破折破断のリスクを伴う「回転」は本当に必要なとき意外には行わないことが肝要であり、またそのような方法をとっておくことで無用なファイル破折から遠ざかることになる。
※マニーの#10Kファイルを根尖まで通している。狭窄していなかったので、そのまま素直に根尖まで通った。写真撮影のため、後述のRc-Prepは使用していないジッペラー社のものがコシがあって安定感があるのだが、執筆者は勤務先のファイルがマニーなので、マニーの#10Kファイルを使用している。ジッペラーのほうを使いたいが、無い袖は触れないので道具を使いこなす精神である。別にマニーだから駄目というほどの差はないと思う。
ファイルを根管に挿入・操作する際にはRc-Prepを併用するのが良いと思う。
Rc-Prepは15%EDTAゲルであるが、潤滑剤としての効果と、削片屑をペースト内に内包してくれる効果がある。そして、
次亜塩素酸ナトリウム溶液(ネオクリーナーやピューラックスなど)と触れると発泡する。EDTA自体にも殺菌効果があるので、この組み合わせは効果が高いと思う。
抜去歯牙で次亜塩素酸を根管洗浄に用いた際は、そのRc-prep+次亜塩素酸Naの泡をダッペングラスに集めてもらいたい。思いのほか、削片屑が出ていることに気づくだろう。
原則2は、私の文章力の無いこの記載ではよくわからないと思うので
抜去歯牙で存分に練習してもらいたい。誰も文句は言わないし、あらゆる角度からファイルの動きを目で確認できる。
原則3:穿通したら、#10Kファイルをすぐには抜かず、根尖部の狭窄具合を読み取る明らかにルーズならそのまま抜いてかまわないが、多くはそこそこの抵抗を感じているはずだ。少しでも抵抗があるようなら、すぐには抜かず、穿通した状態から1mmほど引いてまたファイルを押して根尖孔に出す。この動作を15回は行う。高度に狭窄した根尖であれば30回以上行う。
この動作は乱暴に行うとファイルが壁にあたって曲がったり根尖孔の機械的損傷を招くので、ファイルを持つ指先に意識を集中させて慎重に行う。
EMRにつないでいるとピーピー喚きたてるが気にしないこと。
こうして#10kファイルによる通路作りを確実なものに仕上げておくのである。
この動作が終わって始めてファイルを根管から引き抜く。こうすると、二度目のファイル挿入で根尖にファイルが通らなくなることを回避できる。
ファイルを回して操作していないので、ファイルには、多かれ少なかれ根管の形が「印象」されているはずだ。
抜いた後はファイルの形も観察する。
原則4:機械式のニッケルチタンファイルは、根管の形成に用いる数社から出されているNi-Ti製品(プロテーパー、エンドウェーブ、K3など)は、クラウンダウンを基本としている。拡大と形成を同時に行う設計である。
だから破折する。メーカーや著名人が何を言おうが、実態はNi-Tiファイルは折れまくっているのである。
もし使用するのであれば、根管拡大を済ませた後に根管形成として使用するべきである。
ニッケルチタンファイル製品の殆どはテーパーが6度のものであり、そのテーパーに合わせた根充用GPが用意されている。根充のための器作りとして使用するのである。
根管形成をNi-Tiで仕上げて、そのままテーパードGPで根充すると早く楽である。
タグバックもテーパーが規格化されていることから安定して得られる。
私の勤務先にはモリタのエンドウェーブがあるが、デンタポートに接続したりするのは面倒なので、使用するときは、
通常のマイクロモーターのコントラにエンドウェーブのファイルを装着し、Rc-Prepで満たした根管内に低速(一番低い回転数)・非注水で、作業長に合わせてクラウンダウンさせて「器作り」している。
エンドウェーブは#40までのファイルしかないようなので、根尖部が大きい感染根管治療には向かない向きがある。
今のところ手用でやることのほうが慣れているので、殆ど前歯部の抜髄症例で使うか使わないかである。今後、もっと慣れてくれば使用の幅が広がりそうだが、手でできるものがありそれに慣れているのであれば、まずは手でやるスタンスを維持している。
次回は大臼歯の抜髄についてを予定
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