2012年04月25日

根治は好きだけど根充は嫌いな奴ww

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のっけから酷い始まりですが嘘はつけない。好きになるよう努力せねば。

実習で習ってきたとおり側方加圧充填を行っています。オブチュレーションガッタやドックスベストセメントをNTコンデンサーで根尖まで送り込む方法を習ったことはありますが、現実に行ったことはありません。
それよりも先に根充の基本であるラテラルを確実に行えるようになることが大切なのではないか。その先にラテラルの限界を知ることができるのではないか…なんとなく殊勝な考えですが、ラテラルは慣れてはいるのでこれでいいか、と思っているホンネはある。垂直加圧を行おうとすると器材を揃えて練習をしないといけませんし。
今のところラテラルで出来ているんだ!(出来ているハズだよな?)ラテラルで戦ってきたんだ!(アンダー根充、再発は多々経験済み)ラテラルでいいんだ!

しかし7番の根充〜とくると正直、気持ちは萎えます。
前歯小臼歯は気分的に楽なのだが。藪医者の症例選びという諺があってだな。
私以外にも同じ思いの人はおられないのか。

世のエンドドンティストたちの殆どは垂直加圧充填を行っているようですが、垂直加圧の方が手早く、写真的に格好いいから行っているようにも思えたりする。嫉妬ではなく。論文上は側方加圧も垂直加圧も予後に差異はないとしている。でも、みんな垂直加圧ですね。楽で手早いからでしょうか。即枝にGPが流れるのが気持ちいいとか、案外にそういう悦楽的な理由が第一なのか。拡大と形成を終えた根管が、規格GPと不一致で止むを得ないとか、技術的な理由なのか。

ひとまず、まだまだラテラルで根充をしていこうと思っているが、ラテラル根充における不満になにがあるかを整理したい。漠然としたまま対策はできないからであります。

(つづく)
posted by ぎゅんた at 12:38| Comment(0) | 根治(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月19日

Rc-Prep(取扱説明書より)

Rc-Prepの箱の中の説明書を読んでみると、英語、フランス語、イタリア語、…と各国の言語の説明はあるが日本語版はなかった。これは女性専用車輌があるのに男性専用車輌がないのと同じである。日本語のできるスタッフがいなかったから英語のでも読んでや、という事情があるのかもしれんが知らんがな。俺は怒り狂って読んでみることにした。

どうやらこのようなことが書いてあるようだ。


Premier RC-PREP used with sodium hypochlorite solution gives you these advantages.

1.根管の拡大と形成を容易にする。EDTAは根管壁のカルシウム塩ならびに石灰化物のカルシウム塩の除去を助け、リーマー、ファイルの根管内での拡大と形成をより手早くする。

2.歯髄組織(生活歯髄または壊死歯髄)は次亜塩素酸溶液を用いて洗浄した時により容易に除去される。酸素の泡が過酸化尿素から放出されることで歯髄や削片、他の屑が浮かび上がる。

3.歯髄を失うことで変色をきたした歯であれば、歯を明るくする、次亜塩素酸溶液は歯を漂白するからである。この過程は、過酸化尿素からの酸素の遊離びより増強される。

4.根管をより綺麗に清掃し象牙細管を開口させることにより、根管系への薬剤の浸透性を向上させる。


Rc-PrepはEDTAを含有している。EDTAによるキレート作用は、歯髄結石や根管壁のカルシウム塩の除去に効果的である。この作用が根管内の拡大と形成につながる。
Rc-Prepはまた、特別な水溶性基剤に過酸化尿素を含ませており、これが潤滑剤として作用することで根管内での器具操作のストレスを軽減させるのである。
Rc-Prepは次亜塩素酸溶液と反応させるべきであるが、それは過酸化尿素との反応のことである。
反応により遊離した酸素の活発な発泡は、歯髄残渣や象牙質の削片を浮かび上がらせる。この反応はEDTAも遊離させるのでカルシウム塩とのキレート反応はより迅速になる。この発泡性の反応は根尖部への削片の詰まりを防止し、また、象牙細管内物を除去して根管貼薬剤のよりよい浸透に役立つ。


これ以降もまだ記述は続くのだが、その内容は「根管治療で、どのタイミングでRc-Prepを使うか、なぜ使うのか、どのような効果があるのか」が過程的に書かれている。内容は前述の域を出ず、書き出してもクドクなるのでやめておこう。や、訳せないからじゃないんだからね!

Rc-prepは拡大清掃補助剤だけれど、ネオクリーナーなどの次亜塩素酸溶液と併用するといいんだよ、ってことが分かればよいのです。
posted by ぎゅんた at 21:57| Comment(2) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月11日

大臼歯抜髄の方法〜天蓋除去から根管口明示を中心に

大臼歯の抜髄である。その具体的な手技について。

手持ちの抜去歯牙の中に、ちょうど intact な下6があったので、下顎の大臼歯という想定ですすめよう。
天蓋除去から根管の口明示までを中心に具体的な説明をしていきたい。
あらかじめ言っておくと、この方法は上顎の大臼歯も、樋状根にもすぐに応用できるので、別に下顎6で説明しても問題ないのである。大臼歯の抜髄が不安!怖い!自信がない!という先生は参考になるかもしれない。

このご紹介させていただく方法は、ひとまず今のところ、教科書や専門書などで目にしたことはない。
というより、世にあるエンドの本は、様々な器具や拡大の方法、テクニック、注意点、そしてマイクロエンドらについては言及されているものの、大臼歯の抜髄について具体的に書いた本は少ないのではないか。「パーフェクト歯内療法」ぐらいではなかろうか。

もし記載があっても、最も太い遠心根管を狙ってバーを髄腔に穿通させて云々となっているはずだ。でも、これでは教科書や学生時代の実習の内容と変わらないであろう。

確かに、最も太い(であろう)遠心根に向かってまずバーで穿ち、そこから各根のある(であろう)方向にバーを進ませて天蓋除去をする…これはおよそ基本的なやり方で実習で習った方法ではなかろうか。
しかし、狭い口腔内の奥で歯軸や、カリエス、修復物に注意しながらこれを達成するのは、単純に難しい行為ではなかろうか。いわんや、加齢や慢性う蝕で第二象牙質・第三象牙質で狭窄した歯髄腔を持つ歯が対象であれば…私自身は、実習通りの方法でできる自信はなかったりする。ただし、これから紹介したい方法ならできる自信がある。

使用する器具は、特に特別なものはない。割合にクラシカルである。
方法を知ったら、細かいところは各個人でモディファイドすればよいのである。
話のキモは天蓋除去までであるが、私自身が行っている根管口明示まで記載することにした。


使用する器具
・梨の形をしたバー(名前がわからん)
前歯の支台歯形成で舌面の形成に使用するもの。
髄角露出に使うバーはこんなやつだよ.Jpg
※勤務先で使っているやつ

・シャンファーバー
細めのものならなんでも。先が切れない鈍なものの方が良い(髄床底は聖域。傷つけたくないからである)。
天蓋除去の時に使用。先が切れなくなったシャンファーバーはエンド用にとっておくとよかろう。


・ゲーツドリル(No.2,3,4)
ピーソーリーマーの代わりに用いる。根管口明示のための器具である。


・Rc-Prep
根管にファイルを通す時に使用する。参照


・ネオクリーナー
次亜塩素酸である。濃度は濃い方がよい(Rc-Prepとに反応的に)が、当然、扱いがシビアになる。
論文を参照すると、濃度による殺菌作用には差がないから、洗浄時に用いる量を増やすなり洗浄回数をふやすなりすると良い、とされているのが一般的である。なので、低濃度のものを温度を上げて使用するのが安全で効果が高いかもしれない。

私の勤務先には、根治に次亜塩素酸は使わないので(院長曰く、配管が壊れるから)、こっそり持ち込んだピューラックスをBK水で希釈して使用している。

コストを考えるとピューラックス(濃度は6%)が良いと思う(セキネのネオクリーナーはtoo expensive)。

Rc-Prepに触れると発泡し、ペースト内部に取り込んだ削片ごと根管から洗い出せる。
濃度が濃ければ濃いほどこの発泡はより顕著になる。バキュームを歯牙に近づけで吸うこと。


・手用ファイル(ステンレススチール)
Kファイルの#10、#15、Hファイルの#15をまず用いる。
#10のK-file:ネゴシエーション
#15のK-fileとH-file:ゲーツでの根管口明示前の拡大に用いる。


1.対象となる歯牙を確認する。う蝕、修復物、咬耗はないか。(口腔内での)歯軸は?
右下6.Jpg
※実際の臨床では斯様にまっさらな状態の歯牙を抜髄することは少ないですね。便宜抜髄かマイクロクラック由来のpulぐらいでしょうか。う蝕のある抜去歯牙のほうが実戦的ですが、そういう歯は智歯を除いて抜去歯牙にコレクションされないんですよね…


2.梨状のバーで咬合面のほぼ中央から髄腔に向かって掘削していく。髄角が点状に出現してくる。
髄角露出途中.Jpg髄角露出遠心頬側の存在.Jpg
※抜去歯牙だと髄角が露出しても出血がないので分かりづらい。通常の抜髄時は出欠で髄角露出がわかるのでより容易である。不安なら探針で髄角の露出を確認するとよい。
髄角が出たあたりの深さはこんなもん.Jpg
※髄床底の位置はおおよそエナメルセメント境(CEJ)ぐらいであるので、バーは結構深く入るのである
髄角露出遠心頬側の存在から遠心舌側根管の位置を読む.JPG
※下顎の6で、もし遠心の髄角の出現が頬舌的に見られれば四根管を疑える。


3.髄角の露出を確認後、天蓋除去へ
露出した髄角を先の細いバーでつなげます.Jpgこんな感じになっていきます.Jpg
※シャンファーバーを用いて、髄角から髄角へ、バーをつなげていく。バーはあまり深く入れすぎないほうが余計なところを傷つけない。その意味で、バーの先端は鈍な方がよいのである。すべての髄角をつなげると、天蓋が髄腔歯髄の上に落ちる感じでFreeになる。ここの処理がうまく出来ると快感である。天蓋がとれました.Jpg
※取れた天蓋
天蓋が取れるとこんな感じ.Jpg
※天蓋の下には髄腔歯髄があるので、スプーンエキスカやピンセットでまず掻き出すなりつまみ出すなりする髄腔の歯髄などをスプンエキスカで取り捲った後.Jpg
※こんな感じになるはず。ロードマップの上にあるのは象牙質粒だろうか?


4.ネゴシエーション
ネゴシエーション.Jpg
※髄腔にRc-Prepを注入し(溢れるほど入れるとEMRでリークするだけなので程々に)、まず#10のKファイルで根尖までファイルを穿通させる。ファイルの動かし方は「確かな原則」を参照されたい。すべての根管のネゴシエーションを終えたら、#15のKファイルを根尖まで通し、軽くファイリングする。ここで一回洗浄する。その後、Rc-Prepを注入し#15のHファイルに持ち替えて根管内をファイリングする。このファイリングはとにかく根管拡大が目的であるので、壁にファイルをしならせながら掻き上げるように積極的に行う。
各根管にkファイル10番をネゴシエートし、Hファイル15号でファイリングした後.Jpg
※こんな感じになってくる。この作業をこなしておくと、この後のゲーツドリルによる根管口明示が容易になるのである。
ゲーツのドリルは注水下、高回転で行う。No2から、2⇒3⇒4⇒4⇒3⇒2に順次使用する。
最初の2⇒3⇒4のときは、基本的に根管口から根尖方向へズズズッと沈む(快感)ゲーツドリルの方向にあわせて上下させるだけでよい。
4⇒3⇒2のときはやや外側に拡大するように動かすとよい。エンド三角を除去し、根管口付近の直線化を図るためである。
ゲーツドリルは細いシャンクでつながっており、あまり派手に動かすと折れるが、シャンクの基部から折れる設計になっているようなので、破折に関しては多少安全である。いままでに先端の蕾の部分だけが折れてしまった経験はない。勿論、折れぬよう、乱暴に操作しないことを心がけるのは言うまでもない。
ゲートドリル後.Jpg
※こんな感じに仕上がってくるはずである。根管口が丸く拡大されているのがわかる。顔に見えて不気味…



今回の話のキモは天蓋除去までの方法だったのであるが、根管口明示までが根治における重要なステップであるので、併せて記事にした。

写真で伝わることは少ない。
早速、抜去歯牙で試してもらいたい。5〜6本も練習すれば実践に応用できるようにようになり、さらに理解が深まっていくことだろう。おそらく、実習で習ってきた方法よりは安定して天蓋除去が出来るのではないだろうか。私自身がこの方法で助かっているので記事にしたわけだが、いかがなものだろうか。多少削りすぎてしまう欠点はあるものの、安定して天蓋除去まで到達できる方法だと確信しているのだが。

最初に根間に手をつける歯科医師の責任は実に重大なのである。
抜髄処置で下手をこいて医原性の難治性根管にしてしまうことほどのストレスはないのである。

少しでもつまらないミスを減らし、手早く、安定して目的を達せられるようにする。
この「型」を模索していきませんか。

参考になる所があれば幸いです。
 
posted by ぎゅんた at 22:50| Comment(4) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月10日

What were you up to?

抜髄である。

思い起こせば、初めての抜髄は左下4だった。研修医の時分である。一年上の先輩が、初めての抜髄なら、と症例を譲ってくれたのである。根貼(RCT)は経験があれど、「抜髄」として最初から最後までやるのはそれが初めてであった。
形としてはできたが、一時間半ほどかかったおぼえがある。経過を追えなかったので、治療後の経過は知らない。非常に勿体無いことである…
この時思ったのだが、まだ単根の5番だったからまだしも、これが6とか7だったら、どれだけ時間を要するのだろうか?そもそも、根管口明示まで、パフォらずに出来るのだろうか?できる気がしないぞ。俺は胃が痛くなった。

幸か不幸か、その後は何故か抜髄症例に会わぬままであった。
治療の方針としては、抜かない・削らない・とにかく歯を残すことを心がけており、間接覆髄、モディファイドシールドレストレーションを数多く行っていた。歯を残すといえば聞こえはいいが、単に罰髄〜補綴に自信がなく逃げ道にしていたのである。
大臼歯の抜髄が怖かった。やれと言われてやり通せる自信がなかった。歯を保存することは絶対だが「やらなくてはならないとき」はやらなくてはならないのだ。

そうこうしているうちに、右上7にレジンコーティング後にインレー修復をした症例(インレーの合着はスーパーボンド)が歯髄炎になったことがあった。自発痛ありで、熱刺激で持続性疼痛ありである。抜髄以外に手はなかった。
自信がないのを悟られないように浸麻して、いざインレー除去、抜髄へ…

終わるのに2時間半かかった。それも、不完全な根管口明示、拡大であった。根管からの止血さえおぼつかなかったと記憶している。出来損ない治療である。俺は自分のあまりの不甲斐なさに失神した…わけはなく、時間はかかったものの、初めての大臼歯の抜髄を終えられたことに満足感すら抱いていたのである。

しかし、二度できるかと言えば自信はなかった。なんとかなるのだろうとは思ったが、不安が残った。しかし抜去歯牙で自主的に練習することはなかったのである。最初はできなくともいずれ何とか出来るようになるだろうと思っていた。しかしそうなるために必要な臨床経験は明らかに不足していたのである。何も考えずにとにかく数をこなさなくてはならない環境の正反対の環境にあったのだ。そのことを意識して、せめて自主練でも、という気になっていなくてはならなかった。

もしこのブログを読んでいる若い研修医の先生で根治に自信がなかったら、とにかく抜去歯牙で練習をして欲しいと思うのである。間違った「型」のまま診療に慣れていくと、自分自身は真面目に治療しても、予後が悪かったり時間がかかったり、余計に難しくしているだけだったりと、診療が次第にストレスになってくる。誰しも楽に早く予後が安定した治療ができるようになるべきである。名医という言葉がある限り医は科学ではないという諺もあるが、それでも汎用的に通用する診療の「型」はあるはずである。

extracted_practice.Jpg


このブログは、その型をEndodonticsのフィールドで模索するための、私にとってのアウトプットとして設けたものである。参考になるところがあるかもしれないし、反面教師の材料になるかもしれない。ご意見・ご感想があればご教示下さい。


次回(こそは)大臼歯、下顎6の抜髄についてです。
posted by ぎゅんた at 17:28| Comment(0) | 根治(回想) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月01日

エンドの「確かな原則」

確かな原則・・・と、注釈&マイルール


原則1:抜髄根管にせよ感染根管であろうと、根管内にファイルを挿入する前に、歯冠〜髄腔〜根管口にみられるう蝕象牙質・感染有機物は完全に除去しておくこと

意外に等閑にされている、最も重要なポイントではなかろうか。
根治ではファイルを根尖まで通すが、その際には、如何に慎重に操作しても感染物質を根尖孔外に押し出してしまう。根管治療後の痛みの原因の多くはここにある。
根尖孔外への押し出しは避けられないので、限りなく少なくなる操作を行うことは勿論のこと、押し出してしまう根管内物質ができる限り弱いものであるようにしたい。
つまり、ファイルを根尖に通す前に、ファイル以外で取れるだけ除去しておくのである。

DSC_0075.jpg
※前歯で根管口明示までおおよそ終わらせた状態。前歯部のアクセスは、教科書的な舌側からのものよりも、本来の根管の走性に倣ってラビアルアクセスの形にするのが良いと思う。こうしないと、ファイルのしなりが邪魔をして舌側の根管壁が触れないからである。


原則2:virgin-canalにファイルを挿入する時には、#10のKファイルを用いる。このとき、決してファイルを回してファイルを根尖には進めないこと。ファイルは押し引きの動作で根尖まで通す。これで通路を確保する(negotiation)

ファイルは根尖に向かってグッと力を込める感じで進める。決して回さない
狭窄していない根管であれば、根管壁に沿ってファイルが根尖孔から出るはずである。狭窄している根管であれば、根尖部でファイルが抵抗を持ってくる。
ファイルに込める力はずっと込めるのではなく、グッと根尖に向かって力を加えた後、一度力を抜き(ファイルを一瞬歯冠側に戻すようにした後)、再度根尖に向かって力を加える。押し引きの動作である。
そして基本的には根尖に通すまで決してファイルを抜かない。一度抜いてしまうと二度と入らなくなることがある。それはファイルを抜いたからなので、抜かないことが大切なのである。
基本的にファイルは回さないが、狭窄した根管では、根尖付近でファイルにウォッチワインディング操作をキリモミのように行うこともある。だが、狭窄が著しく無ければ、通常は押し引きで根尖まで到達する。したがって、ファイルの破折破断のリスクを伴う「回転」は本当に必要なとき意外には行わないことが肝要であり、またそのような方法をとっておくことで無用なファイル破折から遠ざかることになる。

DSC_0077.jpg
※マニーの#10Kファイルを根尖まで通している。狭窄していなかったので、そのまま素直に根尖まで通った。写真撮影のため、後述のRc-Prepは使用していない

ジッペラー社のものがコシがあって安定感があるのだが、執筆者は勤務先のファイルがマニーなので、マニーの#10Kファイルを使用している。ジッペラーのほうを使いたいが、無い袖は触れないので道具を使いこなす精神である。別にマニーだから駄目というほどの差はないと思う。

ファイルを根管に挿入・操作する際にはRc-Prepを併用するのが良いと思う。
Rc-Prepは15%EDTAゲルであるが、潤滑剤としての効果と、削片屑をペースト内に内包してくれる効果がある。そして、次亜塩素酸ナトリウム溶液(ネオクリーナーやピューラックスなど)と触れると発泡する。EDTA自体にも殺菌効果があるので、この組み合わせは効果が高いと思う。

抜去歯牙で次亜塩素酸を根管洗浄に用いた際は、そのRc-prep+次亜塩素酸Naの泡をダッペングラスに集めてもらいたい。思いのほか、削片屑が出ていることに気づくだろう。

原則2は、私の文章力の無いこの記載ではよくわからないと思うので抜去歯牙で存分に練習してもらいたい。誰も文句は言わないし、あらゆる角度からファイルの動きを目で確認できる。


原則3:穿通したら、#10Kファイルをすぐには抜かず、根尖部の狭窄具合を読み取る

明らかにルーズならそのまま抜いてかまわないが、多くはそこそこの抵抗を感じているはずだ。少しでも抵抗があるようなら、すぐには抜かず、穿通した状態から1mmほど引いてまたファイルを押して根尖孔に出す。この動作を15回は行う。高度に狭窄した根尖であれば30回以上行う。
この動作は乱暴に行うとファイルが壁にあたって曲がったり根尖孔の機械的損傷を招くので、ファイルを持つ指先に意識を集中させて慎重に行う。
EMRにつないでいるとピーピー喚きたてるが気にしないこと。

こうして#10kファイルによる通路作りを確実なものに仕上げておくのである。
この動作が終わって始めてファイルを根管から引き抜く。こうすると、二度目のファイル挿入で根尖にファイルが通らなくなることを回避できる。

ファイルを回して操作していないので、ファイルには、多かれ少なかれ根管の形が「印象」されているはずだ。
抜いた後はファイルの形も観察する。


原則4:機械式のニッケルチタンファイルは、根管の形成に用いる

数社から出されているNi-Ti製品(プロテーパー、エンドウェーブ、K3など)は、クラウンダウンを基本としている。拡大と形成を同時に行う設計である。だから破折する。メーカーや著名人が何を言おうが、実態はNi-Tiファイルは折れまくっているのである。

もし使用するのであれば、根管拡大を済ませた後に根管形成として使用するべきである。
ニッケルチタンファイル製品の殆どはテーパーが6度のものであり、そのテーパーに合わせた根充用GPが用意されている。根充のための器作りとして使用するのである。

根管形成をNi-Tiで仕上げて、そのままテーパードGPで根充すると早く楽である。
タグバックもテーパーが規格化されていることから安定して得られる。

私の勤務先にはモリタのエンドウェーブがあるが、デンタポートに接続したりするのは面倒なので、使用するときは、通常のマイクロモーターのコントラにエンドウェーブのファイルを装着し、Rc-Prepで満たした根管内に低速(一番低い回転数)・非注水で、作業長に合わせてクラウンダウンさせて「器作り」している
エンドウェーブは#40までのファイルしかないようなので、根尖部が大きい感染根管治療には向かない向きがある。
今のところ手用でやることのほうが慣れているので、殆ど前歯部の抜髄症例で使うか使わないかである。今後、もっと慣れてくれば使用の幅が広がりそうだが、手でできるものがありそれに慣れているのであれば、まずは手でやるスタンスを維持している。
 


次回は大臼歯の抜髄についてを予定
c u APEX
posted by ぎゅんた at 18:12| Comment(11) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする