2018年04月23日

電動注射器にはアネジェクトU


アネジェクトU.jpg
どうせ「古いスーファミ」みたいに黄ばんでいくんだから、白でなくマットブラックな外観にした方が麻酔注射器らしくない格好いい見た目になっていただろうに、と思ふ


握力のない私は、付着歯肉に局所麻酔液を注入する際に息が上がるほどの疲労を覚えたりします。浸潤麻酔(以下、浸麻)の際の局所麻酔液は、抵抗がなくて麻酔液の注入が容易な部位に注射しても、肝心の麻酔効果は「散って」しまって、結局は奏功不良になってしまうもの。注入時に抵抗がガッツリある場合は、浸麻液がゆっくりと強固な組織内に浸透することで適度適切な局所麻酔効果が発現するものです。これは下顎大臼歯部でことにわかりやすい。浸麻は、術者が楽をすると肝心なところで効いてくれないのであります。

とはいえ、付着歯肉への注射にせよ歯根膜の注射にせよ、術者はプランジャーに圧を加え続けることになります。逞しい先生はまだしも、私のような貧弱インドア豚にはこれがシンドイ。一人二人ならまだしも、しばしば臨床で起こりうる「続くときは続く」現象によって浸麻が連続する場面ともなれば、疲労がこたえて涙目。

そんなわけで、麻酔用の電動注射器は以前から関心があるアイテムでした。

この度ようやく『アネジェクトU(日本歯科薬品)』を購入したので、今回はそれに関する浸麻の記事を書いてみようと思い立った次第。



浸麻と私
思い起こせば研修医やペーペー駆け出し歯医者の頃、カートリエースやオーラスターが診療室には備わっていたが「お前にはまだ早い」と上級医に諭され、私はもっぱら 手用注射器を使っていたものであった。

これは「悪いなのび太。この注射器は」理論ではなく、まず手用注射器で及第点の浸麻ができるようになることが先決であり、そこから効かせるための考察を行い、無用な痛みを与えることのない、患者の安全のための浸潤麻酔を体得することを促していたのである。

私の母校の歯科麻酔科は、いまは分からないが当時はかなりのスパルタ教室であった。当院実習で歯科麻酔科のローテになる週を皆、戦々恐々としていた。私も例外ではない。胃を痛くした。しんと静まり返った大教室でアドレナリンとエピネフリンの違いやα作用β作用について口頭試問を受け、答えを間違って大声で罵倒されたりもした。ローテの期間、我々は歯科麻酔科にコッテリと絞られる続けた。歯科麻酔科は、患者さんの安全に直結してくる最前線の臨床分野であったから、厳しいのは当然のことなのであった。少なくとも私は、どれほど臨床経験を積み重ねていこうとも、歯科麻酔に関しては生涯、徒や疎かにできない気持ちがあり続けると思う。これは母校の歯科麻酔科の薫陶の賜物と言って良いだろう。

そんなわけで、歯科麻酔に関しては、いつも特別な思いがある。ことに「痛くない局所麻酔」を施すことで歯科治療を安全・安心に遂行することは、市井の開業医に求められた大いなる課題である。



痛くない麻酔の実現のために電動注射器?
電動注射器が、痛くない局所麻酔に直結することはないと私は思う。電動注射器が麻酔時の痛みの減少に有効なのは、低速度での麻酔液注入しか期待できず、注射針の刺入時の痛みは変わらない。浸麻における最大の懸念は、やはり注射針刺入時の痛みの存在だからである。

されども「よく効く麻酔」のためには有効な器具であると思う。一定の速度で麻酔液の漏れを防ぎつつ組織内に麻酔液を注入しやすく、また、術者の疲労軽減によって「このぐらいで、もう、いいだろう…」的注入量不足を回避できるからだ。注射後に痛みを感じにくい麻酔(「よく効く麻酔」)のためには、確実に貢献してくれる器具ではないだろうか。

注射針刺入時の痛みを可及的に小さくするにはどうしたら良いか?は成書に様々に記載がある。
基本的には、表面麻酔を併用してよく切れる細い針を用いることだと思うし、その通りだと思う。

以下に、現時点の私が行なっている方法と知りうる考えを述べておきたい。

1.表面麻酔
シール型のものを切って使用(『ペンレステープ18mg』および『リドカインテープ18mg』)。

貼る部分は、当然、最初の刺入点になるが、ターゲットは齦境移行部である。最も重要なのは、貼る前に粘膜をエアでキンキンに乾燥させて間髪入れずに貼りつけることである。

貼り付けたら、その上にロールワッテを載せて固定するようにして、できれば1分待つ。待てば待つほど良い結果が得られるハズだが、流れてくる唾液や口腔内の湿気で濡れてしまうので限度がある。せっかちな先生なら30秒でも良いだろう。粘膜の乾燥が得られた状態でズレずに貼られ続けていたなら、たとえ30秒でも表面麻酔効果が得られている。


2.よく切れる細い針
細い方が刺入時の痛みは小さい、ということで33Gのものを使用。
「よく切れる」はメーカーの技術力を信じるしかない。当たり前だがディスポである。


3.注射針刺入時の具体的な手法
ロールワッテを指で外側に押しながら、表面麻酔のテープをピンセットで引きぬき、テープが貼られていた箇所をエアで乾燥させる。この状態のとき、齦境移行部はロールワッテを指で押していることから粘膜が伸展してテンションがかかっているはずだ。そのまま、ロールワッテを遠心方向にずらすように押し、注射針をそっと粘膜の上に乗せ(まだ刺入していない)、ロールワッテ加えていた圧を解放することで、粘膜が本来の位置に戻るように移動させると同時に、その動きによって針が粘膜に刺入されるようにする。こうすると痛みが少ないようである。

そのまま針が抜けないように粘膜下に局所麻酔液注入していく。カエルの腹様に膨らむはずだが、まずそれでよいのである。0.2mlほど注入したらうがいのために起こす。しばらく休んでもらい、バイタルの確認を行う。

そのうち、刺入部周囲に「広く浅く」浸麻が奏功し始めるので、次の「本命の注射」の刺入の際の痛みをブロックできるようになる。付着歯肉への刺〜傍骨膜注射になるが、いまこそ電動注射器の出番である。



電動注射器の選定
アネジェクトU以外にも、オーラスター、ワンド、カートリエースなど様々に存在するが、私は刺入時の針先のコントローラブルをペングリップに求める向きがあり、総合的に判断してアネジェクトUが最も手に馴染んだ。気の抜けた電子音楽が流れるあたりも悪くない(不要ならOFFにできる)。

最初の刺入時の局所麻酔液の注入時にはHigh(H)を、それ以降の「本命」の場面では「Medium(M)」の速度を選択している。

アネジェクトUは良い電動注射器だと思うので、興味のある先生はデモ機を借りて使い勝手を確かめると良いだろう。



その他
・刺入部位となる粘膜面は必ず清拭しておくこと
・針が細いほど、術後の刺入点の化膿や壊死が生じやすくなる気がする
・なんだかんだで、刺入時の針先が最もコントローラブルなのは手用注射器です
 
posted by ぎゅんた at 23:21| Comment(0) | 局所麻酔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月27日

EdgeEvolve & EdgeGlidepath

2018/4/6 追記
edgeendo.jpg

Edge Evolve(17/.04)
購入したサイトの説明によれば、GTSeriesX 互換 とある。GTシリーズというのは、記憶違いでなければ、デンツプライのロータリー系NiTiファイルの一系統だったはず。

プロテーパーネクスト:X1の代替品としてEdgeTaperEncore:X1を使用してみたところ、その正体はHyFlex-EDMな感じであったが、目的とする」グライドパス形成後の予備拡大」には確かな効果を示してくれ、あ、これで良さそうと納得しかけていた次第。

このEdgeEvolveは、EDGEENDO社(?)のEdgeシリーズのひとつだが、EdgeTaperEncore:X1と同じ号数とテーパーでかつ価格がより安くなってくれることから試用することにした。これがプロテーパーネクスト:X1に似ていれば言うことなしだ。

使用回転数とトルクについての記載がないものだから、GT Series X の説明書の300-600rpm(トルク設定は謎)を参考に、ひとまずXスマートプラスにプリセットされているプロテーパーネクストの設定で使用することにした。


結果
・プロテーパーネクスト:X1とは異なる
・EdgeTaperEncore:X1のほうが使い心地が良い
・通電性が悪いのかEMRとの連動ができない

ファイル材質は柔軟(弱々しいフニャ◯ン)であるが、ゴボウみたいに虚弱で薄汚れた見た目がイケてない。「古い世代のNiTiファイルを引き出し奥から出してきました感」がある。

メーカーのHPを参照すると回転疲労に対して強いぜみたいなデータが誇示されていたりする。まあ嘘ではあるまいから、破折しにくいファイルだと受け止めてよいだろう。

どのみち、セーフティメモディスクで使用回数をカウントされ、花びらが散ればお役御免となるルールからは逃れられない。というか、今時のNiTiファイルは使用に際して原則を遵守していれば、セーフティメモディスクの管理内で破折などしないほど抗破折への信頼性が高くなっている。大切なのは、滅菌を経ても切れ味や耐久性が鈍らず維持されることであろう。

役に立たないと窓から投げ捨てるほどダメなファイルではないが、プロテーパーネクスト:X1の代替品として気持ちよく使用できるのはEdgeTaperEncore:X1の方である。

このEdgeEvolveとEdgeTaperEncoreを使い分けるほどの暇も必要性もないから、私のエンドには採用されないことになった。それにNiTiファイルは、どれも外見が似たり寄ったりなものだから、種類豊富にファイルケースに陳列させようにも雑多、混乱をきたしやすい。道具は必要最低限のものをシンプルに美しく揃えるべきである。

というわけで、EdgeEvolveさんは申し訳ないが「肩たたき」コース。
メルカリかラクマで捨て値で売っちm…あ、医療機器だから無理か。ちくしょう。

もし欲しい先生がいらっしゃいましたらタダでお譲りします。抜去歯で練習してみて下さい。



Edge Glidepath(16/.02)
これはまあまあ、いいですね。

なんとなく見た目的に本家プログライダーさんよりゴツい気がしますが、気のせいではなく、ファイル基部がふとましくなっています。前歯や単根など、本来の根管形態がマアマア太い根管なら本家プログライダーと似た感覚で違和感なくグライドパス形成を行ってくれます。細い湾曲根管だと、太い基部との干渉があるのか、もうひとつうまくいかない。

抜髄根管で12KでPatencyをとった後にこのEdgeGlidepathでグライドパスを形成してみたところ、ファイルに歯髄が絡まってくれたりと、プログライダーと似たような仕事っぷりを見せてくれます。

なんとなく見た目的にプログライダーより薄汚れている感がありますが、本家本元とは違いますものね。仕方ないね。

総合的には、コスト削減のための代替品としては満足のいく仕事をしてくれるファイルだと思います。
posted by ぎゅんた at 00:49| Comment(2) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月23日

続・XP-Endoシェーパー

XP-endo shaper.jpg

実際の根管でGP除去拡大形成を目的に数回、使用してみました。使用回数はセーフティメモディスクで管理しています。いまのところ破折なし。

根管をシェイピングしているときに「あ"あ"あ"〜(ビチビチビチ)!」みたいな独特の音がするのがちょっと気持ち悪いですが……使っているうちに「こいつぁいい…」と蠱惑され始めます。パンフレットのわけわからん加減に反して、使ってみると素直なのであります。

とはいえ、価格は相当に高価でありますし、これを保険診療で用いるのは採算度外視姿勢を選ぶことに他なりません。エンドが好きになると財布が軽くなる一方であります。見た目に反してかなり丈夫なんで、使いどころを選んで大切に使えば破折せず長持ちしてくれそうな気がするあたりはナイス。

GAIJINのエンドドンティストたちは、本当にこれを使い捨てで使っているのだろうか?
へへへ、捨てるぐらいならあっしが処分しときやすぜと揉み手してお近づきになりたい気分です。


外見的に差異が少なく区別が極めて困難なのですが、このXPエンドシェーパーにはXPエンドフィニッシャーという兄弟がいます。兄弟揃ってパンフレットがわけわからん加減なのですが、このフィニッシャーの必要性は、今のところあまり感じません。機械的清掃もGP除去もシェーパーが達成してくれますし、根管の消毒を目指すにしても、私は「3-D disinfection」であるエンドアクティベーターを所有しているからです。

エンドフィニッシャーは、金属ファイルなので、根管内で動作時に根管壁を叩けば、それはそれでスメア層を作りそうな気もします。エンドアクティベーターは医療用ポリマーチップなのでどれだけ根管壁を叩いてもなにも起こりません。

樋状根やイスムスという、従来のNiTiファイル形成の盲点を突かれる形態を示す根管形成の仕上げにXP-Endoシェーパーを用いて、その後の根管洗浄にエンドアクティベーターを用いれば十分な気がしております。


何はともあれ、XPエンドシェーパーとフィニッシャーは今後の臨床評価の蓄積が楽しみです。良い結果を叩き出すファイルであろうことは確信しているからです。

しかしこのファイルの成功を、ヤクザ企業デンツプライが黙っていない気がします。またおそろしからずや。
 
ラベル:XP-endo
posted by ぎゅんた at 16:39| Comment(4) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月14日

(チャレンジ企画)XPエンドシェイパーでガッタパーチャの除去を狙う


XP-endo_おしゃれな広告.jpg


いまエンド界隈ではXPエンドシェイパー/フィニッシャーが熱い(個人の感想)!

わけてもクロロホルムを併用したGP除去がゴイスな効率らしく、リトリートメントでGPに苦渋を舐めさせられているドクターを虜にしているようだ。

ちょっとしたツテで新品のシェイパーを1本入手できた運のいい私は、早速、試してみる気持ちが湧いた。

しかし、当院にはクロロホルムの用意がない。FCやFGならあるが、それは貼薬剤である。脱シックハウス症候群の気運もあって、歯科医院からはホルムアルデヒド系薬剤は姿を消しているのであり、クロロホルムも当然ながら例外ではない。元々はGP除去に比類なき効果を示す薬剤であったが、GPソルベントやユーカリソフトにその位置を置換されてしまった。しかし、肝心のGP融解作用は、クロロホルムに比肩する薬剤がないこともまた事実のようで、本邦はさておき海外ではエンドの第一線で変わらず使用されていると聞く。


無い袖は振れない
そんなわけで、薬剤棚の奥でベンチを温め続けていたGPソルベントを持ち出して使用することになった。リトリートメント根管で、GPが存在する根管の根管口を明示してから髄腔にGPソルベントを満たして、XPエンドシェイパーで除去を狙ってみた。エンドモーター(Xスマートプラス)の設定は1000rpm/1.2Ncmでやってみることにした。


こんなこともあろうかとマイクロスコープ(『BrightVisionLed』ペントロンジャパン)を借りていたので、慣れない操作ながら録画にチャレンジした。視野が微妙にずれていたりラバーダム装着を端折っていたりとアレなところはご容赦願いたい。

録画の手法は、BrightVision LED のHDMI出力端子を利用してモニターに映像を出力させて、そこに噛ませたキャプチャー機「AVT-C285」から録画するというもの。「AVT-C285」は、その出自はゲームレコーダーである。多少、古い機器であり操作感にモッサリさがあるものの、極めて安価にマイクロの写真撮影と録画ができる点でこれ以上のものはないのではないか。やるなペントロンジャパン。

録画されるファイルは16:9の超高画質mp4であり、AVT-C285に装着するUSBメモリスティック内に保存される。画質が綺麗なのはいいが動画サイズが大きすぎてアップロードできなかったため、なんやようわからん海外の動画編集ソフトを用いてカットとリサイズとエンコードを行なっている。


その他
これは録画していないので文章だけの説明になる(「トラスト・ミー」案件)が、「ネゴシエーションとグライドパス形成を達成したものの、根管内はまだGPまみれ」の根管に、XPエンドシェイパーを1000rpmで挿入していったところ、ガシガシとGPを除去してくれることも確認した。

XPエンドシェイパーは、案外に単体でも十分なGP除去能を備えているのではないか。もっとも、イスムスやフィンに入り込んだGPの完全駆逐のためには、GP溶解剤を併用するべきであろう。
 
ラベル:XP-endo
posted by ぎゅんた at 12:08| Comment(4) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月09日

前歯部歯冠破折とCR修復


kerr_harmonize.jpg
「カメレオンエフェクトのあるCR」のイメージイラストと思われるが、充填されたCRが色調を変えるわけがない。本来の意味からすると間違った用語であると思う。


「歯が折れた!」
外傷で前歯の歯冠が破折した時に、まず診断するべきは脱臼の有無である。その次に、根管治療を必要とするかどうか見極めを行う。

脱臼もなく、露髄もなさそうで歯髄の保存が期待できるならこれは超ラッキー、歯冠修復を考えることになる。コンポジットレジン修復か、補綴処置かを選ぶことになるだろう。

外傷の場合に怖いのは、受傷直後は生活反応を示していたものの、後々になって歯髄が失活してくることである。歯髄のバイタリティが旺盛な幼若永久歯でも往々にして起こりうるので、まことに油断ならないのである。


補綴か修復か
前歯部の補綴は、コンポジットレジンの物性やテクニックが進んだ現在に当たっては、根管治療後に選択されることが多くなっている(と思う)。一方、接着歯学の台頭と発展によって、歯にレジンを接着させる修復技法の信頼性および審美性はひところに比べ格段に向上している。

ひとまず、外傷による歯冠破折で歯髄の保存が可能であるなら、まずはコンポジットレジン修復(以下、CR修復)を選択すべきであるように思う。

これは、

1.即日処置による審美性の回復(歯の喪失感からの救済)
2.不幸にして歯髄が失活した場合の歯牙の変色を確認しやすいこと
3.根管治療必要になった際のエントリーの面で有利であること
4.冠補綴よりは明らかに歯質を切削しなくて済むこと

の考慮が挙げられるからである。



卑近な例
切端と歯冠の修復_01.jpg
露髄なし、打診痛なし、電気歯髄診でバイタル反応あり。
昨日、転んで折れた。この歯のみの処置を早急に希望された急患アポなし来院。

というわけで、こういう場合に私はCR修復を選択するわけである。

最近、私の中でホットな(死語)『ハーモナイズ(kerr)』を使用して、主訴の解決を図ってみた次第。コンポジットレジンの扱いは苦手だが、いつまでも逃げ回るわけにはいかない。そんなわけで、本症例は「私がやりたいから、やった」的要素があることを否定しない。

さて、前歯部のような審美性を求められるCR修復では、エナメル質にベベルを付与することが重要である。


ベベルは、どれぐらい付与するのか?
私が学生時代に大学で習ったときは、マージン周囲に1mm幅ぐらいのラウンドベベルだったかに思う。

そんな今、Youtubeで海外のエステティックな実例(ダイレクトボンディング)を参照すると「え、そんなにつけるんですか」というほど豪快なベベル付与があったりして隔世の玉ヒュン感である。ベベルをリッチに確保することにより、シェードの移行による接着界面の隠蔽と肝心の接着力の確保が約束される。怖くてそんなベベルをつけられない私はノミの心臓なのである。これを乗り越えた逸材こそが、ダイレクトボンディングを得意とするエステシャン・デンティストなのであろう。

患歯にベベルを付与するということは、機械的切削を伴ってエナメル質の新鮮面を露出させることである。愚劣な私は、術前のオリエンテーションで患歯にベベルを付与することを説明していなかったため、バットジョイントで対応するハメになってしまった。これは真似をしてはいけない。旧態依然としていようが幅が狭かろうが、やはりベベルは付与すべきだからである。

即日修復するとなると、ワックスアップモデルを用意してシリコンパテで充填用コアを作成することもままならない。畢竟、マトリクスやストリップスを駆使して隣接から歯冠までを含めた形態回復を図らねばならぬ。隣接とバックウォールを確保すれば窩洞は単純化され、作業は途端に楽になるから、この工程は極めて重要である。

エナメル質のみリン酸エッチングした後に、ワンステップボンド(3Mのスコッチボンドユニバーサルアドヒーシブでボンディングし、ストリップスを指で押さえながらハーモナイズエナメルのA2で隣接面とバックウォールを構築。その後、ハーモナイズデンチンA3と切縁部にハーモナイズクリアを部分的に使用して透過性の差異を考慮した充填操作を行う。その後、ハーモナイズエナメルのA2で仕上げる。

切端と歯冠の修復_02.jpg
光重合後にエアーを吹きかけるとこのような感じになる。研磨の工程をなるべく短くしたい(充填でほとんど全てが仕上がっているようにしたい)のだが、やっぱりそうもいかない。

ソフレックスの研磨ディスクで隅角と唇面の隆線や面溝を再現するように形態修正と研磨を行う。充填操作がラフだと気泡の存在を発見して萎えることになる。研磨のステップで歯の本来の解剖学的特徴が見えてきたり再現できたりする瞬間ほど気持ちの良いものはない。しかし私はセンスがないのでそうもいかない。口の中で作業しているときは良さげに見えていても、写真にして改めて観察すると医院を飛び出して路端のガードレールに頭をぶつけて自殺したくなるほど酷いことがある。

切端と歯冠の修復_03.jpg
充填箇所は、エアで唾液や水分を飛ばすと本来の姿が見えてくる。濡れていると意外に「誤魔化しが利く」感じでマシに見えるのが救いか。形態がチグハグやねん。



その他
保険のCRでクリアが使える製品はこのハーモナイズだけ! …多分。

これは意外に重要なのでは。

クリア使うぐらいの充填なんぞ自費やろ、という真っ当なツッコミは当然なのですが、切縁部をCRするときは使ってみたくなりますよね。
 
posted by ぎゅんた at 18:24| Comment(2) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする