2018年01月16日

歯科医が望まない日常光景シリーズAあ、穴が開いている……!


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穴を広げてオートセーフリムーバーを引っ掛けて除去しようとしたが上手くいかず、スリットを掘ってわずかに抉って緩めて除去。見栄えは悪いが仮歯としては使用できる


4年前にセットしたジルコニア冠の咬合面に磨耗原因と思われる穴が空いていました。対合歯にはインレーが入っていますが、咬合接触は舌側咬頭の歯質なので、単純に支台歯形成時の咬合面のクリアランス不足が絶対的原因です。おいこらー


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これはセットして半年後の口腔内写真


ブツは和田精密の『ジルライトクラウン』になります。

『ジルライトクラウン』はコストを優先して審美性を犠牲にした、要するに「とりあえず金属じゃなければOK」な人向きのエントリーグレード・ジルコニア冠であります。

このジルコニア冠は、当時、和田精密が取り扱いを開始したばかりだったはずで、営業マンが「ジルコニアはとても硬いですから破折も磨耗もしませんよ」なんてことを言っていた覚えがある。もっともそれは誇大広告というもので、現実にそんなわけがない。真に受けた歯科医師はいないのであります。むしろ硬すぎて、対合天然歯の磨耗を懸念する声が大きかったと記憶しております。

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根充直後の写真


当時のカルテを見ると「ネゴシエーション後にMtwoファイルで形成」とあり、ラバー下でエンドシーラーを用いたラテラル根充を行なっている。 なんとなく直線的な気がするし、今の自分から見るとずいぶんと根尖を攻めてる印象を受ける。

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除冠後の写真。幸いにも根尖病変は否定できそうで安堵


その一方、黒柳徹子さんに「随分と縁上のマージンなのね」とか言われそうな支台歯が気にかかる。こんな写真をSJCDの症例発表プレゼンで提示したら消火器などの鈍器が飛んできそうです。ジルコニア冠の支台歯形成にビビっていた術者の心理がエックス線写真で分かってしまうというもの。


さてジルコニアは物性的に硬くて頼りになりますけれども、支台歯のクリアランスが不足していれば普通に穴が開きます。なに当たり前のこと言ってんだこの豚野郎と罵られても、現実にそうなのだから述べざるを得ない。

材料の物性に過度に依存するのは厳禁で、支台歯形成は、その原理原則から逸脱せぬように達成しなくてはなりません。脱離をきたさず長持ちさせられる形成かそうでないかは、支台歯形成いかんで瞭然と分かれます。

とりあえず「かたち」にはなるだろう、と適当な支台歯形成でヘボな作業用模型になったとしても、技工士さんが黙々と上手な冠を作ってくれているからこそなんとかなっている冠がどれほど多いのだろうと自省する日々です。そんな冠がセットされたとして、どれだけ口腔内で機能し続けてくれるだろうか?

根管治療で保存と延命が叶った歯を、破折や脱離をきたすことなく長期的に機能させ続けられる確かな腕が欲しいものです。
 
posted by ぎゅんた at 17:27| Comment(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月15日

(書籍紹介)『またまた ホンマ堪忍やで、歯科個別指導 PART2 〜生活保護編〜』



感想
大阪は、怖いなあ……(偏見)


ところで、生活保護の患者さんの受け入れは当院では行っていません。
父が過去に「指定医療機関」の申請を取り下げたからです。

なにが理由で取り下げたのかは黙して語ってくれませんが、なんというかまあ、推察できるところはあります。この曖昧模糊とした心理は、医療従事者側から生活保護の患者さんを一面的に捉えるところに存在する偏見と実体験が入り混じった独特のものです。

私は過去に勤務先で生活保護の患者さんの診療に幾度も携わりましたが、妙な体験もしませんでしたし、さしたる特別な印象も持っておりません。「それは、自分が住んでいる地域の住人の中の生活保護受給を患者として診なかったからだ」とさる方に指摘され、あ、それもそうだわと膝を打ったものです。地域に根ざし、逃げも隠れもできない田舎に居を構えて診療している責任ある立場ではなかったからです。

確たる真偽は確認していませんが、最近は「指定医療期機関」の申請をしないか、返上する歯科医院が多いようです。この理由も、まあ、なんとなくだが分かります。

私自身は、指定医療機関になることは開業歯科医師ができる社会貢献のひとつだろうと思っていますし、申請をしたいと考えているのですが、父が首を縦に振らないので頓挫しています。黙して語りませんが、思うところがあってのことだと理解できますし、その意思を尊重しているところです。

というと格好いいですが、実のところは、ちょっと経営や台所事情に関わってくる微妙な題材を膝を交えて懇々と話し合いをすると、手が出る足は出る棍棒で殴りかかるの様相を呈しかねないのが同業自営業親子経営スタイルの面倒臭いところでありますゆえ、余計な殺し合いは避けるための妥協にすぎません。父が完全に引退したら申請することになりそうです。つっても、なんだかんだ元気そうだし、いつになることやら。



というわけで本書では、生活保護の患者さんの個別指導についてが解説されています。

アホくさいことなんぞ笑い飛ばせばエエんや!という著者の熱い意気を感じられる意図はすぐに分かりますが、それでもちょっと下品すぎです……。婚活中の身で、意中の人との初デートの待ち合わせ場所に『すたみな太郎』を選定するぐらいの飛ばしっぷり。いや私の実体験ですけどね。来てくれなかったので一人フードファイトして帰った記憶。そんな私ですが、今は嫁と子供がいる。そういうことです。ガハハ


好き嫌いが分かれるだろうし、単純に他人に薦めにくい内容になっています。各章の最後のコラムとか真面目なんですけどね。いやはや困った。

せっかくだから俺は、この本に書いてあることを実行するし、推しておくぜ。
 
うーんグダグダ
posted by ぎゅんた at 23:30| Comment(0) | 書籍など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月11日

支台歯とクリアランスと技工士さん


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ペーペーの医局員時代に師匠に教えてもらった『ビジュアル・セミナー臨床咬合学入門』から。内容はちょっと古くて時代を感じます。


クリアランスの形成の不備が原因でセット時の咬合調整で穴を開けてしまうのは、新人歯科医師が必ずや経験するお約束であります(違ったらスマヌ)。下顎臼歯の咬合面で生じやすいものです。そしてまた、支台歯形成の手引書には、必ずや「咬合面中央は削除不足に陥りやすいので注意すること」と記載があるものです。

支台歯形成時のクリアランスの確認およびバイト材の厚みの確認不足が原因でありましょうが、支台歯形成時のクリアランス確認を目で行うと誤認しがちなことも見逃せません。それを予防するためのツールが存在するほどです(⇒ナビゲージ)。

そんなかんだで、支台歯形成に慣れないうちや苦手とする先生では、クリアランスが不足しがちになる傾向にあります。正直なところ、私も、その傾向があります。

補綴物の製作を依頼される立場である技工士さんは、おしなべて優しいですから、いくら歯科医師の支台歯形成(や印象)に不備があっても、黙して補綴物を仕上げてくれます。畢竟、セット時の咬合調整で冠が極度に菲薄化するか穴が開く事態に陥ります。この時、歯科医師は自身の力量のなさやクリアランスを誤認した現実に突きつけられます。こうしたとき、「技工士が悪い」と開き直る先生もいると仄聞しますが、それは天に唾する行為に他なりません。技工士さんもミスしないわけではないでしょうが、まず疑うべきは己の形成であり、印象であり、石膏模型でしょう。

少なからず自分でワックアップや鋳造などをしてきた先生は、決して技工士さんを責めません。まず、己のステップ内容のミスを疑い、原因を追求します。技工操作は、確かなステップの積み重ねであることを理解しているものだからです。

そういう意味では、歯科医師、とくに若手の先生は己で技工作業を(全てではないにせよ)行うべきですし、自分の形成から技工操作にいたるまでを技工士さんにチェックしてもらい、忌憚のない意見をもらうべきです。耳の痛い意見をズバズバもらうものですが、このときの有り難みは後になるほど生きてきますし、なにより若いうちにしか得られないものだからです。

臨床経験が長く慣ればなるほど、歯科医師は技工から遠ざかってしまうのはやむを得ない側面が多いのですが、技工士さんに丸投げする姿勢は色々な意味で勿体無いことだと思います。技工士さん不足も相まって、これからは歯科医師が技工士さんを奪い合う時代になりそうですし、技工士さんも歯科医師を選んで仕事をすることになりそうです。偉そうなのは旧態依然として歯科医師の思い上がりがのみ……と陰口を叩かれる悲劇は終わりにしたいものです。

posted by ぎゅんた at 12:06| Comment(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月26日

ラバーダムシートの色はどないしょ〜ブラック ラテックス デンタルダム


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私が初めて触れたラバーダムシートの色はライト(肌色みたいな色調)であった。学生実習の時のラバーダムシートは、いつもこの色なのであった。つまり、当時を思い出してゲロを吐きそうになるので、金輪際、私はもちいることはない。

研修医であった時分に、ロエコ社の蛍光パープルな、やたら大きくて進展性のある「洋モノ」なラバーダムシートを愛用していた記憶がある。あるときフロアを取り仕切る歯科衛生士長に「先生、そのシートすごく高価なんですよ」と耳打ちされたことはあるが「誰もラバーダムしてねえじゃねえか」というようなことを、もうちょっと紳士的な表現で返答した記憶がある。今となって、私は彼女の気持ちが理解できる。当時のペーペーな私のような「張り切ってラバーダムしている以前の状態」な歯医者には過ぎた代物だったことが明らかだからだ。ラバーダムをかける行為に満足して、肝心の、術野-患歯における軟化象牙質除去を等閑にして「治療」したいたのだから……。「ラバーダムをかければ意識が患歯に集中するのだから、軟化象牙質を取り残すなんてとんでもない!」と甘く考えていた私がとんでもないのである。

目下、私が愛用しているのは昔からFEEDで取り扱っているデントレックス・デンタルダムの中厚5インチ(青色)である。もうちょっと安いサンクチュアリのラテックスデンタルダムの中厚5インチ(緑色)も購入してみたが、なんとなくシートが硬い感じがで、デントレックスのシートの方が好みである。意外と操作感に差があるのだ。



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神経質な感染根管治療のお供に


いつもお世話になっているFEEDで「黒色ラバーダムシート(サンクチュアリ)」の存在を知った。

ラバーダムシートの色に求められるのは、患歯への集中のためにコントラストをつけることである。薄い色のラバーダムシート用いるとコントラストが弱いのがわかる。なるほど黒色のシートであれば、白色基調の歯牙と対をなすコントラストではあるだろう。ダイレクトボンディングにおける修復後の「美術品」的写真を撮影するときには、黒色の背景を用意してブラックフォトにするものであるが、黒色のラバーダムシートには、そのような「魅せる」要素も込められているのだろう。

ラバーダムシートといえば、ライト(肌色)か青色か緑色が普通のように考えていただけに、黒色のラバーダムシートはユニークさを覚える。黄色のスイカがあるんだから黒色のラバーダムシートがあってもいいじゃないかと、ユニークな人が考案したのかもしれぬ。しばらくしたらコントラストを捨てて透明に近いクリアなラバーダムシートが登場するかもしれない。サランラップでやれという無慈悲なツッコミは不可。


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シェードのアンマッチもバレます


取り寄せたサンプル品が届いたので早速、使ってみよう。
シートの厚みは0.2mmであり、気持ちの良い進展性がある。6インチのシートはGAIJIN規格っぽい大きさであるが、シートをフレームに張る作業に余裕が出る面で楽である。

「黒は女を美しく見せるのよ」は、『魔女の宅急便』に登場するオソノさんの有名なセリフだが、黒色ラバーダムシートは歯を美しく見せはしない。コントラストがハッキリして、存在感の増した患歯が真顔で佇んでいるだけである。つまりは黒色のラバーダムシートによるコントラスト効果は抜群なのであって、患歯に意識をこれ以上なく集中させることができる。

作業野が黒色の世界になるから、あたかもゴミ袋の中で探し物をしているような妙な心境になるが、自分の治療の足を引っ張る因子ではない。患歯を綺麗に仕上げたい気持ちを後押ししてくれるアシスト効果が期待できる上に25円/枚程度のコストなので、臨床をより楽しくするためのアイテムのひとつに加えて良さそうだ。6インチのものしか選べないのはやむなし。

 
posted by ぎゅんた at 12:47| Comment(2) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月20日

歯科医が望まない日常光景シリーズ@


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アハーン...


やるせないけど抜歯せざるを得ないのが歯根破折歯であります。

歯根が破折すると、生体は手のひらを返すように異物扱いを始めるようで、直ぐに炎症反応起こすのが常です。畢竟、「歯がグラグラすると思ったら歯茎が腫れてきて……」と頰を抑えながら来院される患者さんが気の毒なことに生まれてしまうのであります。目下、この治療は抜歯しかありません(抜歯して口腔外で清掃して接着性レジンで復位させて再殖する手法もあると聞くが、そのテクニックが開業医に根付かないあたり、予後が悪いのだろう)。歯根破折に伴う抜歯→インプラントの流れが主流なのでないか。


歯根破折に至る原因は様々であるが、概ね失活歯で生じるものである。いうまでもなく、天然歯に比べ脆弱だからである。

1.ブラキシズム等による過度な咬合圧の存在
2.早期接触・バランシングコンタクトの存在
3.歯根象牙質と弾性係数の異なる異物の存在(主に銀合金メタルコア)
4.根管治療に伴う拡大形成により、根管の更なる脆弱化
5.根面う蝕の進行

とりあえず思いつくだけを挙げたが、これらが複合的に歯牙に作用して結果として歯根破折に至ると考えている。皆さんも、なんとなく、思い当たるだろう。

歯科医になって、よもやこれほど歯根破折に悩まされることになろうとは誰も思っていなかったであろうし、歯学生諸氏も想像していないに違いない。いかにして歯根破折を防いでいくかは、保存に努める市井の開業医に課せられた考究課題である。



卑近な臨床例
「昨日ぐらいから急に歯がグラグラして」と来院された患者さん。

#37の歯冠に、薪割りじゃあるまいし近遠心方向に走る亀裂が存在し、特に頬側歯冠に動揺を触れる。歯根に至る破折は疑いようがなく、デンタル写真を撮影。亀裂の程度にもよるが、抜歯になる可能性が極めて高いことを告げる。頬側歯頚部根面う蝕(充填物の脱落後放置とおもわれる)の進行による歯髄感染とから歯髄歯に至り、失活歯となり、亀裂に至ったのであろう。

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シールみたいなのは、表面麻酔用のリドカインテープである


炎症はさして重篤ではなく、キシロカイン1.8mlで無痛的に抜歯が狙えるので伝達麻酔は施さず。

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うーんこれはやっぱり……

果たして、スーパーボンドで破折を接着復位して再殖で保存できるのだろうか?
たとえ生着しても、その後、咬合させることを考えるとまた破折してしまうのでは……

posted by ぎゅんた at 12:17| Comment(5) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする